「お帰り、
「…何で居るんですか仁王先輩っ」
「今日から居候ナリ」
「あたし、そんなこと聞いてないです!」
「俺の親とお前さんの親が決めた事じゃ。まぁ、よろしく」
「(え、よ、よろしく…?)」


普通に学校行って普通に家帰ったらそこには学校で有名な仁王先輩が居らっしゃった。
あたしは独り暮らしで、仁王先輩も独り暮らしで、あたし達の親はお互い仲が良いらしい。(でもあたし達はそこまで仲良くない)
だけど、何でだ!何であたしと仁王先輩が一緒に暮らさなきゃならないのだ!


。腹減った」
「あたしは仁王先輩の奥さんですかっ」
「……それも良いのう」
「…冗談ですから」
「ダーリン、って呼んでみんしゃい」
「え、あ、はぁ!?」
「冗談じゃよ」


クックッと仁王先輩は笑う。
あ、あたしからかわれたのかっ!
仁王先輩は―そうだ、女遊びで有名なのだ。ただえでさえ銀髪とか目立つのに…お近づきになりたくなかったのに…


「…とりあえず、ご飯作ります。何が食べたいですか?」


あたしは はぁ、と溜息をつきながらそう言った。
これで「お前さん」とか言ったら殴ってやろう。


「お前さん」


……この人は、だ。
あたしをからかう事しか頭に無いのか。


「好い加減にして下さい。もういいです、あたしが食べたいの作りますから」
「ケチ」
「…言っておきますけどあたし仁王先輩の事何とも思ったませんからね。ただの居候人です」
「ふぅん…?」
「(何だその意味ありげな微笑みはっ!)」


ニヤニヤと笑ってこっちを見る。
――かっこいい…
え、うわ、ないないないない!かっこういいとかないないないない!!
すぐにその感情をかき消して、着替える為に自分の部屋へと向かう。


……そういえば。
仁王先輩は何処で寝るのだろう。あ、確か1つ空き部屋があったっけか。そこに寝てもらおう。
そんな事を考えながらどんどん制服を脱ぎ捨てて下着だけになり、そこら辺にあったちょっと大きめのTシャツを着る。


ガチャッ


は!?何事!?
あたしが驚くのは当然だと思う。だって、Tシャツ一枚の状況でなんと仁王先輩が部屋に入って来たのだから。


「ななななななななにやってるんですか!!出てって下さい!!!!」
「腹減った」
「わ、分かりましたから!!!!!!出てって下さい!!」
「ヤダ」


意地悪そうに微笑んでどんどんこっちに近づいて来る先輩。
あたしはもうそれどころじゃない!仮にもTシャツ一枚だ!仮にも思春期まっさかりな女の子だ!


仁王先輩は焦るあたしにもおかまいなしかの様にあたしをきゅ、と抱き閉めた


「ぎゃー!!!やめて下さいってば!!!」
「これでも俺の事居候人としか見れんか?」
「何言ってるんですか!!!離してください!」


仁王先輩はあたしを抱き閉める力を緩めたと思えば、鎖骨の辺りにちゅ、とキスをした。
音こそは可愛かったものの、その瞬間チク、と痛みがした。(やられたー!)


「まだ居候人?」
「ああもう!分かりました!!!居候人じゃありません!」
「ほんと?」
「本当です!!!」


その答えに満足したのか仁王先輩はあたしを抱き閉めるのをやめ、にこりと微笑んで部屋を出て行った。


「うぅぅ…何がしたかったんだ…」


へなへなと床に座りこむあたしの顔は、絶対まっかっかだったと思う。






あるていどのきけんをかくごしましょう






とりあえずは『ただの居候人』から『危険な居候人』に変更しておこう。