ジュージューと音を立てるフライパン。さっと火を止めて食器棚からお皿を取り出す。
ああ忙しい。そういえばゴミも溜まってきた気がする。そうだ、こんな時こそ!
「仁王先輩ゴミ捨て行って来てくれません?」
「嫌じゃ」
即答。
ふざけるな、あたしに家事全部押し付ける気か!
「何でですか」
「外、寒いし」
…。
これはキれても良いでしょうか、お母さん、お父さん…!
あたしはずんずんと仁王先輩の前へ歩み出る。
「此処に住んでいる限り仁王先輩も家事を手伝わなきゃ駄目です!」
「誰がそんな事決めた」
「だって一緒に住んでるじゃないですか!当たり前でしょう?」
「……」
仁王先輩はじっとあたしを見つめる。
…出来れば朝っぱらからそんな色気100パーセントな瞳をしないで戴きたいのだが今はそんな事言ってられない!
あたしはどくんどくんと高鳴る心臓を押さえながらもう1度「仁王先輩、ゴミ捨て行って来て下さい」と言った。
「嫌じゃ」
ぷい、そっぽを向くのは仁王先輩。
―――もう、これは我慢の限界だ!
「いいですか!?此処はあたしの家です!この家ではあたしがルールなんですっ!」
「……ぷっ」
「(わ、笑われ―!?)仁王先輩!ゴミ捨て!」
「…分かった」
再びこちらを向いてにこり、と微笑む。
あたしの顔はその答えを聞いてにっこにこになる。
―やった!仁王先輩があたしの言う事を聞いてくれた…!
…しかしこんなに上手く仁王先輩が言う事を聞いてくれる筈はなく。
「ちゅー、して」
また無理な条件を付けられた。
「―はぁ!?何であたしがそんな事しなきゃいけないんですか!?」
「してくれんと行かん。」
「ちょっ―!冗談も好い加減にしてくださいね!」
「冗談じゃなかよ。ほら、早く」
仁王先輩は自分の人差し指で頬を指差す。
な、なんであたしが…!?
いやでも、やってやろうじゃないか!あたしだってやれば出来る筈…だ!
よし、と心の中でガッツポーズをし仁王先輩の顔に自分の顔を近づける。
ちゅ
触れるだけ。本当に触れたか触れなかったか位のキス。
それでもあたしの心臓は破裂しそうな位に高鳴る。
顔が、熱い。
自分の両手で顔の熱を冷まそうとする。
はっ、と気がつけば仁王先輩はにやにやと笑っていて。
「――ご、ごみすて、!ですからねっ!」
あたしは台所へと逃げて行った。
「可愛いのう」
じぶんをしゅじんだとにんしきさせましょう