急いで玄関前の階段を降りる。周りにはちらほらと下校する生徒が友達と話しながらのんびりと歩いていた。

風のせいで広がった髪を押さえつけ、スカートが乱れていないかチェック。すこしほこりがついていたので手で払い、長太郎くんの待つ校門へと急いだ。

・・なんてさ、凄い女の子っぽいことしてるなあと思うよ!・・似合わない?知ってる。黙ってろ。
だってそりゃあ少しは女の子らしくなるさ。さすがのあたしでも、彼氏と帰るとなればそれなりに身だしなみには気を配る。

校門の方に目を向ければ、見知った影を発見した。長太郎くんは腕を組みながら壁に背を預け、こちらに気づくと控えめに口角を上げた。かっこいい。


「ごめんね。待った?」
「いや、俺も今来たところ」
「良かった」


付き合い始めて1ヵ月が経過した。それなのに敬語っていうのはどうなんだ。それを長太郎くんに言ってみると彼はすんなりとタメ口で話すことを承諾してくれた。こういうの渋るタイプだと思ったんだけど、そんなことはなかったらしい。『少しでも先輩と同じ位置に立ちたいんだ』って困ったように笑っていたっけ。


「先輩、もうすぐ修学旅行だよね」
「そうだね。中間テストも終わったし、本当にもうすぐ」
「3泊4日だっけ?」
「うん」


とすん。長太郎くんとあたしの手がさっきから何度もあたる。心臓がうるさい。


「ちょっと、寂しい・・かな」
「・・俺もだよ」
「・・嘘だけど」
「え。先輩酷いなあ」


とすん。近いようで遠い距離。遠いようで近い距離。こんなにももどかしいなんて、知らなかったなあ。


「・・やっぱ、ほんと」


自らそっと、長太郎くんの手を握ってみる。長太郎くんの手はほんのりと暖かかった。
心臓がばくばくうるさい。少しは静かにしてくれ、お願いだから。本当に長太郎くんに聞こえかねない!

すると、長太郎くんが不意に立ち止まった。
も、もしかして手繋がれるのが嫌だったんだろうか。すっごい恥ずかしいんだけど、これどうしたらいいの!?うあああこれならやっぱり恥を忍んでちゃんに手の繋ぎ方を聞いとくべきだったかもしれない!あああ穴があったら入りたいいいい!


「先輩」
「・・・っ」


唇に感じる、僅かな熱。
それは一瞬で離れていったけれど、あたしに永遠を感じさせるには十分な時間だった。


「俺、やっぱ先輩が好き」


長太郎くんが頬を朱に染めてはにかむ。そして繋いでいた手をぎゅ、と強く握り締められた。上手く言葉にすることは出来ないけどさ、


あたしも長太郎くんが好きだよ。