。伯爵が呼んでる」
「え…俺?分かった。」
本を読みながら煎餅を食べていると、のそりと現れるティキさん。「なーに読んでたの?」という質問に冗談で「エロ本」と答えると、ティキは顔を真っ赤にして鼻を手で押さえた。…ティキさんはアホだと俺は思う。

「嘘嘘。じょうだ――」
「リオンー!!リオンー!!が大人の階段上ったー!!がエロ本見てるー!」
俺が言う前に叫びだし、走って去って行くティキさんに俺は はぁ、と溜息をつく。――そして遠くから「マジで!?」「マジマジ!」「俺何かすっげぇ嬉しい!」「本当可愛いよな!」「今夜辺り抱いちゃおうかなー!」「お前…それは駄目。」「……まぁ俺は前もと…」「お前!表に出ろ!」「上等!」といういつものやりとりが聞こえたのは…まぁ、本当のことである。

「何でスか?エロ本?v」
「あ、伯爵。エロ本っていうか…まぁ面倒臭いんでそういう事にして下さい」
「ところでお遣いを頼みたいんでスv」
「(…人の話聞いちゃいないな、この人)あ、何ですか?伯爵の為なら何でもして来ますよ!」

伯爵は俺の命の恩人だ。此処に置いてもらってる限りは伯爵に迷惑を掛けない様にしたいし、恩返しもしたい。―という事で、基本的俺は伯爵の命令は何でも聞くようにしている。

「行商の所まで行って来て下さイv例のあれが無くなっちゃったんでよねェv今すぐ必要なんでスv」
「行商ですか…うん、俺行くの初めてだけど行きますよ!あの人達、今どの辺に居るんですか?」
ちなみに、”例のあれ”…とは、例のあれだ。そこの所は突っ込まないで欲しい。強いて言えばアクマの製造には欠かせない例のあれだ。これ以上言うと伯爵にミンチにされかけないのでお許し願いたい。

「黒の教団でスv」
「ほうほう、黒の教団ですね……って、」
「「黒の教団!?!?!?」」
俺が突っ込むより先にいつから居たのか大げさに叫ぶリオンさんとティキさん。
ていうか、伯爵…今さりげなく凄い事言ったような…

「伯爵!駄目ですって!」
「うんうん!黒の教団なんて行かせたら…もう、」
「第一はノアだぜ!?エクソシストに何されるか…!」
ずいずいと伯爵に迫る2人に、俺はその場が凍る様な一言を言った。

「俺は、ノアじゃないよ」
「「「………」」」
”は”ノア”じゃない。少なくとも覚醒はしてない。それは俺が一番知ってる。
凍りついたこの空気を最初に溶かしたのは、リオンさんとティキさんの溜息だった。

「まぁ、確かにそうだけど…は”ノアの一族”だよ」
「少なくとも――…、ノアと一緒に過ごしてんだから。そーいう事言わないの」
うんうん、と頷く2人。暖まる空気。何か良い雰囲気。俺が「ごめん」って言おうとした瞬間、伯爵が口を開いた。

「でも教団側にはがノアと接触してるって事は知られてませんヨv」

――ぴしり。
空気が固まる。リオンさんとティキさんの顔を見て見ると、呆気にとられた表情。わ、笑える…!だ、駄目だ!笑うな、俺!今笑っちゃいけない雰囲気だよ!あーでも、あの2人が口開いて鼻水垂れてそうな顔して……ぷ、あー、もう無理!
「あははは!!もーマジうけるよ今の2人!あっはっはっは!」
、じゃぁ早速行って来て下さイv」
「はーい、了解です伯爵!」
「買い方は分かりますよネ?」
「うん、ティキさんとリオンさんがいつもお土産話しつこい位してくれるんで!」

そして俺は未だに呆然としている2人を尻目にしながら、「いってらっしゃイv」と微笑む伯爵に「いってきまーす!」と笑顔で答えた。

ちなみに後ろから「あああ!が強姦されるって!」「ー!!カムバーック!」「五月蝿いでスv」「伯爵!何でに行かせるんスかぁ!!!」「ー!!!」というやりとりが聞こえたのは…まぁ、言うまでもなく事実である。