ゆっくり、ゆっくりと時間は過ぎて行く。
今のあたしは、そのゆっくりと流れて行く時間がとっても大好きだった。













「うぅむ…」
?何悩んでんのー?」
…あのね、明日幸村さんの誕生日で、何あげようか、悩んでて…」


そうなのだ。明日は3月5日、幸村さんの誕生日。3月5日…ヘンリー2世の誕生日… 青函トンネルで本州と北海道が結合…あぁ、なんて幸村さんらしい綺麗な日なんだろう!
そんなことをもんもんと考えていると、は少し呆れたようにあたしに言った。


「なんで今日になって言うの?おかしくない?」
「う…その、最近部活に入ったし…、試験も近いし…いそがしくて、」
「でも普通、彼氏の誕生日くらい前々から用意するっしょ」
「……、うん…」


ごにょごにょと言葉を濁してしまうあたしに対して(本当に忙しかっただけなのだ!幸村さんの誕生日…決して忘れる訳ない!)はさらに追い討ちをかける。は頼りになるのだけど直球すぎるとあたしは思う!
「何か欲しいって言ってなかったの?」「あ…いや、特に」「好きなものとか」「すきなもの?」「…じゃあせめて好きな色」「何を言う!幸村さんに似合わない色はない!」


すると、「幸村さんは何色でも似合うよ!ほら、純白っていう感じもするけどあの優しい微笑みは、」と前のめりになるあたしを尻目には盛大な溜息をつきやがったのだ…いや、あたしが悪いのだけど


「仁王先輩、いるでしょ?」
「え、あ、におうさん?」
「うん。あの人幸村先輩の従兄弟だから欲しいものくらい知ってるんじゃないかな?」


…え?
思考が、まるでウィルスにかかってしまったパソコンの様にフリーズする。
幸村さんと、仁王さんが、従兄弟?従兄弟っていうことは、親同士が兄妹で……えっ?従兄弟?……従兄弟ぅ!?


「うそだ…えっ、従兄弟!?」
「うそ、知らなかったの!?有名じゃない!」
「あ、あたし知らない!だって、幸村さんも仁王さんも言ってなかったよ!ブン太さんだって赤也くんだってみんなみんな言ってなかったもん!」
って…案外幸村先輩のこと知らないのね」


何を言う!と反論しかけるものの、言われて見ればそうかもしれない…なんて思ってしまったあたしは思わず言葉を飲み込んだ。
「幸村先輩のこと知らないのね」その言葉に、どくんと胸が波を打つ。(彼女―なのに?)


「あ…いや、でも!これから知って行けばいいと思うよ!?焦ることないよ」
、……ううっっ!ありがとう、だいすき!」


ぎゅうう、とに抱きつくと「ぐぇ」と乙女らしくない声を出されたものの、よしよしと頭を撫でてくれた。やっぱり、持つべきものは友人、だ!

そして、「じゃぁ…調度今昼休みだし、仁王先輩のとこ行ってきちゃえば?」という問いかけにあたしは元気良く「うん!」と答えたのであった。