うぅ…他学年の廊下というものは、やはり緊張する!にも是非着いて来てもらいたかったのだが、あたしと仁王さんが話している間なんか気まずいじゃん、とバッサリ断られてしまった。そしてなによりこの階に幸村さんが居るのか!と思うと、ぎえぇと叫びたく「あっ!ちゃんだぁ♪可愛い〜!」…さっきからずっと、この調子である。













「いえ、滅相もないです!先輩のがとてもとてもおうつくしいです!めーるあどれすを是非教えていただきたいほどです!」
「ヤダー!ちゃん本当可愛いね!じゃぁ今度さぁ、メアド書いた紙持って教室行くね!」
「あ、幸村ならC組だよ?分かる?」
「あ、はい!お気使いありがとうございます!」


そう言ってへこへこ頭を下げると、見知らぬ先輩達はじゃあねーと手をぶんぶん振りながら去って行く。なんだか、有名人気分である。いや、そりゃあそうか…だって、あたし幸村さんの彼女…だもん、ね………ぎぇー!今自分で言ってて恥ずかしくなった!


「そうだ…時間は無駄にしていられない!」


昼休みってば、あと15分程だ!しかも幸村さんに見つかってはならない(この作戦がバレたら誕生日サプライズはパー!になってしまうからである。パー!、なのだ)そして限られた時間で仁王さんを見つけ出す……今のあたしは、「事件は現場で起こっているんだ!」とでも言い出しそうな探偵の気分である!むふん。

さて…A組から回って行くか…そう考えたあたしは、そろそろとA組の扉を開けた。…う、視線が、視線が痛いが気にしない!きょろきょろと教室を見回すと、奥の方でブン太さんの背中に乗っかっている仁王さんを発見した。ビンゴだ!


「ブンちゃーん。遊んで」
「退けよー!マジ重てぇ!……あ!じゃん!何だよ、天才的な俺に用?」
「いえ、ブン太さんに用はないです!どちらかと言うと仁王さんの方に用があります!」
「…俺?ブンちゃん、行ってくるの」


「えー、俺じゃないのー?」とガムを膨らませ少し肩を落としたブン太さんに「ブン太さん聞いてくださいよ!あたしガム膨らませられるようになったんです!」と言うと「マジで!?良かったな!」と言いニカ、と笑ってくれた。そんな会話をしているといつの間にか目の前に仁王さんが登場、だ!


「あの、仁王さん…折り入って相談事なのですがっ」
「何じゃ?」
「あの…その……あ、ちょっと屈んでください」
「ん」
「あの、そのですねっ」


こしょこしょ話をしようと両手を口の周りに当てれば、仁王さんはわざわざこちらに耳を傾けてくれた。…仁王さんの髪の毛、とてもさらさらしてる……、じゃなくて!時間はないのだ!急げ、

そしてその一連の話をすると、仁王さんはなるほどのう、と顎に手をあてて首を傾げ、ううんと唸った。(幸村さんと従兄弟伝説は本当だったのか…)


「欲しい物は聞いとらんが…幸村がよく行っとる店なら知っとるぜよ。その店の物なら何でも喜ぶんじゃなか?」
「成る程…!さすがです仁王さん!そのお店って、何処にあります?」
「3つ隣りの駅で、結構ごちゃごちゃしとる所なんじゃが……に分かるかのう」
「わ、分かりますよ…多分」
「…じゃあ、池袋に行った事あるか?」
「いけぶくろ…?は?袋に入ってどうするんです?そういえば最近クラスの子がいけぶくろとかどうたら言ってたんですけど…いけぶくろって袋ですよね?新型アトラクションか何かですか?」
「……今時、池袋を知らん女子学生ってどうかと思うんじゃけど。」
「………」


…だから、何だと言うのだ。その”いけぶくろ”とは。

仁王さんは はぁ、と溜息をつくと、あたしの耳元でこう囁いた。


「一緒に行っちゃる。今日は部活オフじゃし。…ブンブン達にバレると面倒じゃから、内緒じゃよ?」
「本当ですか…!」


その”いけぶくろ”、とは何だか知らんが、何だがあたし1人じゃ行けないところらしいその”お店”。
そこに連れて行ってくれるとは…仁王さん、親切だ!


「3時に校門集合。時間厳守。授業終わったら直行。」
「はい!」


そのお店でプレゼントを買い、幸村さんが「ありがとう、」と言い嬉しそうに微笑んだところを想像して、あたしは嬉しくなって思わず頬が緩んだのを感じた。