キーンコーンカーンコーン、の合図と共に鞄を持って教室の扉にダッシュする。
クラスメイト達が「えっ、HRは!?」と驚きながら問いかけてくるのに対して、あたしはかっこよく「ふっ、あたしには行かなければならない所があるんだ」と台詞を吐き廊下へと飛び出した。








「におーさん!お待たせしました!」
「遅い。」


えっ、ダッシュで走って来たのに?仁王さんってば、どんだけ足が速いんだ…。
仁王さんは「ブンちゃん達に見つかる前に行くぜよ」、と鞄を肩に担いであたしを促す。…だけれど、何だか忘れている気がするのだ。その、なんていうか、心の中がもやもやもやもやするのだ。


「…?」
「………あぁっ!そうだ、幸村さん!」
「?」
「幸村さんに、今日は一緒に帰れませんって言うの忘れてました…大変だ」


幸村さんとは、あの初めて一緒に帰った日から『これからは用事がある時以外一緒に帰ろう』と約束をしたのだ。幸村さん、あたしが先帰ること知らないだろうから…探すだろうなぁ…。
「先駅まで歩いててください!」そう仁王さんに告げると、仁王さんは不機嫌な顔をしていきなりあたしの腕を掴み歩きだした。


「ちょ…いたい、痛いです仁王さん!」
「…」
「ていうか、放して下さい!あたし、幸村さんのとこに行かないと!…って聞いてるんですか?けちょんけちょんにしますよ!」
「…」
「におうさん!仁王さんってば!」


仁王さんは1回も振り向かずに先を歩いて行った。




























「わー!幸村先輩だ!こんにちは」
「幸村先輩!どうしたんですか?」


放課後になりいつも通り校門まで行くと、凄い嬉しそうにニコニコと笑うの姿が今日はなかった。どうしたのだろう、HRが長引いているのかもしれない。もしかして急用が出来たりとか。
心配になった俺は、のクラスまで探しに行く。教室の扉を開ければすぐに後輩達が集まって来てくれた。


「ふふ、こんにちは。、居るかな?」
ならとっくのとうに帰りましたよ。何か急いでたよねー」
「うん。授業終わったらすぐ走ってちゃったし。」


――やっぱり、急用が出来たのかな。
それなら一言声を掛けてくれれば良いのに。…声を掛ける時間が無い程急な用事だったのかな。しょうがない。まだブン太達は教室に居るかな?もし居たら一緒に帰らせてもらおう。
俺は「ありがとう」と言うと、教室を離れブン太達のクラスへと向かった。


「ブン太ー仁王ー、居るー?」
「おう、幸村!」


教室に入ると、クラスメイトと話しているブン太が目に入った。仁王は、居ない。あいつも先に帰ったのだろうか。


「あれっ、はー?」
「ああ、急用みたいで先帰った。仁王は?」
「仁王はいつも通り。でも今日は急いでたぜー」


――それより。
前も感じたけれど、何でブン太はのことを呼び捨てにしてるんだろう。こういう疑いの気持ちって良くないとは分かっているけど、やっぱりは俺の彼女だし。……やめやめ。こういうの無し。
「じゃあ、一緒に帰ってやるよ!」と笑うブン太に「ふふ、ありがとう」と言うと、ブン太は小走りで鞄を取ってくる。


「――あ、そういえば今日、昼休みにが来たんだぜぃ」
「え、教室に?」
「そうそう。俺に用かなーと思ったら『ブン太さんに用はないです!』とか言われてさー」
「(何でも、ブン太を名前で呼んでるんだ?)うん、で?」
「でー、仁王に用合ったらしくて。2人でこしょこしょ話してよー。仁王が何か言ったんだよな。んーっと…「3時に校門集合」とか言ってた様な気がする!でな、そしたらめっちゃ嬉しそうにニコニコ笑ってんの!―――あ、」


『3時に校門集合』?それで嬉しそうにニコニコ?――何だよ、それ。
言ってはならない事を言ってしまったと思ったのかブン太は気まずそうに俺を見る。
信じたくないけど、考えたくもないけどあの日、が初めてマネ業をやった時。仁王とは――……抱き合って、キスしていた。
見間違いだって信じ込んで、今までやって来たけど…今の会話を聞く限り、今回のはデートの約束としか思えない。こんな事、本当に考えたくないけど、そうとしか思えない。


「――、悪ィ」
「良いよ、別に」


無理矢理、感情を押し殺してにこりと笑う。


「幸村さん、」
「ん?」
「好きです」



あの日小さな声で言ってくれたあの言葉は、嘘だったのか?


もう――分からないよ、