あれから10年たった今、俺はまた””に出会った。
最初は同じ名前…しかも、幸村の彼女っていう事もあって興味本心で近付いた。いつのまにか、彼女の事が好きで、好きで、仕方なくなっていた。
分かってる。このままこんな事をやっても彼女を困らせて、傷つけるだけだってことも、一生振り向かないって事も。俺は、自分が取るべき行動を知っている。
















「…う、――ッ…」
、」


もういやだ。ここから逃げ出してしまいたい。あたしは最低な事をした。



…すまんの。もう、何もせんから。傷つけて、すまんの」
「にお、さん……?」
「幸村には話しておく。多分、分かってくれるから」


仁王さんはそう言ってあたしの頭をくしゃ、と撫でて微笑むと、本当に幸村さんのところへ向かうのか、あたしの傍を離れ歩いて行ってしまう。
何が起きたのかはよく分からないけど、仁王さんは悪くない、とは言いきれないけども、なんか、違う気がする。あたしだって悪い筈なのだ。あたしだって幸村さんに謝らなきゃいけないのだ。全部を話して、一番好きなのは幸村さんですよ!って言ってやるのだ。


「…よし!」


涙をぐい、と腕で拭く。もう泣くな、!泣いたらちりちりワカメになってしまうぞ!仁王さんには…その、悪いのだが…やっぱりあたしが好きなのは幸村さんだ。ちゃんと断らなければならない!よし!
ええと、幸村さんのクラス…は、C組…だっけか?うう、どきどきする!ぜったい幸村さんと別れてやらないぞ!そうと決まれば、善は急げ、だ。仁王さんよりもはやく謝ってやる!このやろう、先に謝らせるか、だ!

あたしは、ぐっ!と心の中でガッツポーズをすると、幸村さんの居るC組へと走った。

































「た、たのもう!!!」


教室の扉を勢い良く開ける。くそう、人の目なんて気にしていられるか!
教室を見渡せば、真面目な顔で何やら話している仁王さん、と…お、う、…ゆ、ゆ、幸村さん、だ!うう、お久しぶりです、幸村さん!やばい、何故か涙が出てきそうである。このやろー、だ!
吃驚しているクラスメイトの皆様に軽く会釈をしながら、幸村さんと仁王さんの元へずんずんと歩いて行く。


…何しとるんじゃ」
「……。」
「ゆきむら、さん」


声が、震える。未だに吃驚した顔の仁王さん。そして沈黙の幸村さん。(か、顔は見れない!)ま、負けるな。あたしならやれる!
あたしは、すぅ、と大きく息を吸う。よし、行け!


「あたしがしゅきなのはにゅき村さんです!!」


…、か、噛んだ…!!!!最悪だ!恥ずかしい!20メートル程穴を掘って埋まりたい!(にゅき村さんって何だ!)
うう、でも此処で引っ込んだら女が廃る!恥じらいを捨てろ!


「ごめなさい、色々、ごめんなさい!あたしが悪いんです!あの日、は、先に帰ってごめんなさいっ!幸村さんの、誕生日プレゼント選んで、内緒で、選んで、驚かせたかったんです!あ、あたしが好きなのは幸村さんなんです!幸村さんが大好きなんです!」


言えた、言えた。言いたかった事、全部言えた!なんか、凄い嬉しい!…これで、「でも俺達別れたじゃないか。良い迷惑」とか言われたら…ものっそい、泣ける。恥ずかしい。
こ、これを幸村さんの顔を見て言えたら良かったのだが…やっぱり、それは怖いのだ。でも、言えただけあたしは凄いと思う。…うう、何か言ってくれ、幸村さんこのやろう!


「…、おいで」
「…っ、」


幸村さんに腕を握られ、そのまま教室から外に出される。う、何だ。何処へ行くつもりなのだ!ぼ、暴力だけは反対だ!


「やっぱ、ちょーっと辛いの。」


あたし達が居なくなった教室で、仁王さんは苦笑いをしていた。



























。」


裏庭まで連れ出されて、急に幸村さんが立ち止まる。


、」
「は、い」


向かい合って幸村さん。ああ、久しぶりに聞く声が心地良い。ちくしょう、相変わらずいいおとこ、である。


「ぶっちゃけ…仁王と、キスした時はすっごいムカついた。」
「…は、い」
「でも、仁王が話してくれたんだ。全部。俺、誤解してた。」
「ゆきむら、さん」
「で、と会わなかった間…ずっと色々考えてて。…全部、の事なんだけど」
「…、」



「自分で思ってたより、俺、の事が好きみたいだ」




吃驚して幸村さんの顔を見上げる。目が合った幸村さんは、顔を真っ赤にして、口元を手で隠して、ちょっぴり上目遣いで。
幸村さん、まだあたしのこと好きでいてくれるんですか?…そう思うと、目頭が熱くなってきて。


「うぅ…ふえ…ほんとーですか…っ」
「うん、本当」
「う、うわあああん、幸村さん、大好きです!大好きですー!」
「ん。……俺、も。」
「全身全霊で幸村さんが大好きですー!!」


うう、良かった。良かった。
そして、ぎゅ、と抱き閉められる感覚。
それがまた嬉しくて、泣き喚きながら「大好きです」と言葉を紡ぐと、幸村さんもその言葉に1つずつ「俺も」、「俺も」と返してくれたのであった。