「あれっ、ちゃん?」
「優希さんこんにちはっ!」


吃驚した顔の優希さん。そりゃそうだ。あたしだって部活に今日から出れるとは思っていなかった!















あの後、幸村さんは直々監督にあたしを部活に出れるよう頼みに行ってくれた。ううん、と唸る監督に対して幸村さんはななななんと!頭まで下げてくれたのだ!そしてそれをみて土下座しようとしたあたしに対し、監督は早速部活に出る事を許可してくれたのだ。
その後「ゆ、幸村さんが頭下げなくても良かったのに!」と挙動不審なあたしに、幸村さんは「……が居ない方が、練習に練習に差し支えが出るんだ、」と何ともキュン死に爆弾発言をかましやがったのだ。勿論顔を少し赤くしながら。…キュン死にである。思い出すだけで、キュン死に出来そうな勢いだ。


「そっか…良かったね!」
「はい、ありがとうございます!幸村さんとも仲直り出来たし…本当幸せです」
「うふふ、本当に…良かったね。こっちもちゃんが居ないと大変だし」


にこにこと微笑む優希さん。やはりいつみても綺麗な顔をしていらっしゃる!忘れ掛けていたのだが優希さんはこれでも赤也くんのお姉さんだ。…あたし、も…こんな綺麗で優しいお姉さんが欲しい…いや!寧ろなりたい!よし、今後のあたしの目標は優希さんだ!そう決意を固めたところで、部員の皆様が登場する。うう、おう・・・あたしも早く着替えなければ!







* * *







「じゃあ、ちゃんはレギュラーに頼むね」
「了解です!」


そして、じゃあ、と去って行く優希さん。みなさんお待ちかねのドリンクあんどタオルたいむである。今はもう慣れてきたのだが、相変わらず優希さんは部員を前にすると怖い。ほらーだ。立海テニス部のほらーである。その、優希さんはドリンクを投げつけたりする。本人曰く「時間の短縮よ」だそうだ。な、なるほど…!実に勉強になる!――ということで、今日からあたしもドリンクを投げて渡そうと思うのだ!
まずは、例の3人組!ジャッカルさんと赤也くんとブン太さんに投げつけてみようと思う!


「ジャッカルさーん!パスでーす!」
「え?――うわっ!!」
「ジャッカルお前何やって「ブン太さんパース!」――わーっ!!」
「2人とも何「赤也くんにもパス!」――って、!?わ!?」


ドリンクを持って唖然とする3人。ふむ、なるほど。これは確かに時間の短縮である!こんな事を考えつく優希さんってば、本当素敵な人だ!真面目に見習わなければ…!よしよし、じゃあ次は…あそこに居る、柳さんに投げてみよう!――そう思い、柳さんの方へ小走りしようとした瞬間、ガッ!、と肩を捕まれた。い、痛い!


ー…?
「っぎゃー!!」


振り向くとにやり、と不気味に笑っているブン太さん。こわい。怖すぎる。何だと言うのだ!


「なんで…ドリンク投げるんだよ!このやろ!」
「だって優希さんが――は、ぎゃはははは!」
「ドリンクはちゃんと手で渡せー!!」
「あはははは!!や、やめてくださ――ははは!!!セクハっははは!!う、訴えますよ!」


ひーひーと笑いつかれたところで、ようやくブン太さんはくすぐる手を止めてくれる。くそう、乙女の体をくすぐるとは何事だ!セクシャルハラスメントである!


「ブン太センパイはさー、姉ちゃんが投げたドリンクが顔に当たった事があって、しかもガム噛んでる最中。」
「それで恨んでるんだよな。ドリンクを投げることに対して」
「うっせーよジャッカル!」
「俺かよ!」


ということは、あたしで憂さ晴らしをした、ということか!畜生。それなら優希さんにこちょこちょすれば良いじゃないですかー!と反論にでるあたし――なのだが、ブン太さんが「何か言ったか?」とくすぐる体制でにこぉ、と笑ってきたので「何でもないです」と慌てて付け加えた。


「…でもまぁ、あと少ししたらセンパイ達と週1でしか練習出来なくなるもんなー」
「そう言えばそうだな」
「え、週1?どうしてですか?」
「卒業、だろぃ」


”卒業”…?3年生――ゆきむらさん、が、卒業?そ、卒業ということは幸村さん達は高校生になって…校舎も別々になって…部活も同じじゃなくなって…!?い、いやだ!そんなの絶対嫌である!


「い、いやです!いーやーでーす!卒業なんてしないでください!」
「え、留年しろってことかよ」
「やなんですー!あたしもっと皆さんと一緒に居たいですー!」
、だから週1で高校生と練習出来るから!」
「週1だなんていやですー!じゃっかるさん!ブン太さん!卒業しないで下さいー!」


ぎゅうう、とブン太さんとジャッカルさんの腕に絡みつくあたし。行かせるものか、高校なんて!さ、寂しいじゃないか、このやろー!
ブン太さんとジャッカルさんは少し顔を赤くし、そんなあたしにぽんぽん、と頭を撫でてくれた。


「まぁ…寂しいけどよ、ほら、…合宿は合同だろぃ!」
「がっしゅく、ですか?」
「ああ、そういえばそうだな。4月、8月、12月に合宿があるな」
「あ、そういえば4月の合宿もうすぐッスね!」
「今年はどっかの学校と合同なんだろぃ」
「合宿…、楽しい、ですか?」
「お、おう…(超スパルタだけど)楽しいぜぃ!」
「そうですか…!合宿、ですか!」
「「「(よ、良かった…)」」」


幸村さんと合宿!うおう、ちょう素敵だ!
一気ににこにこになったあたし。ブン太さんは「でも確かに卒業は寂しいぜぃ」と言ってあたしにぎゅう、と抱きつく。あ、あたしだって寂しいです!

その後、じゃあドリンクを他の方へ…と気付いたと同時に「やばい、此処に長居しすぎた!」と思ったあたしは時間短縮のためやっぱり他の方にドリンクを投げつけたのであった。…勿論幸村さんは手渡しである。(仁王さんにはこつん、とやられ、柳生さんと柳さんと真田さんには何故か「女子がそんなことをしてはいけない」と真剣な表情で説得された。)