「初めまして、、です。一部宜しくしたくない人も居ますけど宜しくお願いします!」


ちらほらと湧き上がる拍手。切原さん辺りが何か言ってるけれど気にしない。丸井さんの姿が見えないけれど気にしない。ついでに仁王さんとも目が合ったけど気にしない。あたしはぺこりと頭を下げると小走りで他のマネの子達の元へと向かった。













ちゃん、宜しくね。分からない事があったら聞いてね」
「はい!ありがとうございます!」


困った時はお互い様だからね、と微笑む優希さんは、な・な・なんと切原さんのお姉さんだとか!うむ、言われてみれば納得だ!幸村さんよりは少しきついウェーブだけど、鎖骨あたりまである髪の毛と小さくて綺麗な顔がマッチしてて素敵だ!あ、あたしもこういう”いいおんな”になりたいな…!
そういえば、此処立海テニス部には”ゆうき”さんが2人居る。1人はこの優希さん。もう1人は丸井さんの弟の勇気くんと言うらしい。あたしはまだ会った事がないのだけど、勇気くんも結構女の子に人気だとか。ちなみにあたしと同い年!仲良く出来ると良いな、


ちゃん、じゃぁ洗濯でもしよっか!」
「は、はい!」
「洗濯機はね、こっち。着いてきてね?」
「了解であります!」


優しいなぁ…優希さん。うわぁ、ぴったりじゃないか!”優”しいから”優”希さんなんだ!あたしは……どういう意味でお母さんつけてくれたんだっけ?「昔魔女っこたん☆」っていう番組が流行ったとは聞いた事があるんだけどな…
テニスコートからゆっくり離れていく。一応あれ以来仁王さんとは接触しないですんでいる。(やったぞ!)後ろでは幸村さんが「集合ー!」って言って何やら部員命令してるっぽい。(どうしよう、何かかっこういい!)思わずにやけてしまったあたしを見て優希さんは「うふ、ちゃんって可愛いね」と言った。だからあたしは負けじと「優希さんのが可愛いですあたしの1千万億くらい可愛いです!」って言ったらまた「可愛いねぇ」と言われた。どうしよう、照れる…!


「此処でね、タオルとか入れて…洗剤入れて…"開始"ボタンを押すと洗濯が始まるから。すぐ終わるから、洗い終わったら脱水して…干す、と!」
「なんか…こういうの、青春っぽいですね!素敵です!」
「あはは、でも慣れちゃうと嫌になるわよ?タオル、汗臭かったり泥まみれだったりするんだもの。」
「ひゃぁー、青春だぁ!」


「きったないなぁー、誰よこれーうふふ」だなんて文句いいつつもちょっと笑顔で洗濯をしちゃう優希さんの絵が頭の中に浮かんだ。素敵だ…!


「優希さんって、”いいおんな”ですよね」
「あははー、そうー?」
「あたしが男だったら思わず食べちゃいたいくらいです!」
「うふふ、嬉しいな。じゃ、洗濯しよっか。」


にこにこと笑う優希さんはちょっと此処で待っててね、と言うと小走りで部室の方へと向かった。洗濯物はあるし…何か忘れたのかな?
ちょっと…暇だなぁ。…洗濯物を洗濯機に入れるくらいはしてても良いだろうか?あたし、ちょっとでも優希さんの役に立ちたい。


あたしは腕を捲くりあげると、汚れたタオルの山へ勢いよく腕を突っ込んだ。


「〜っ、くっさぁ…」


このタオル…は、朝練の時の物だろうか?なんていうんだろう、この匂い…汗臭いっていうか、あ、いやでも弱音を吐いちゃいけないぞ


「う…うぅわ…っ」


た、沢山タオルを持ちすぎただろうか…。前が見えない、し、しかもく、くさい。
よろよろと歩きながらも洗濯機の方へ向かう。あれ?こっちだっけ?見えない…その時だった、


「うっわ、やっべぇ!遅刻遅刻!」
「え!?うわ!?ぎゃー!」


どん、と勢いよく誰かがあたしにぶつかってきた。あたしからぶつかったんじゃないぞ、決して謝らないぞ…!(それにしてもまた色気の無い悲鳴を出してしまった…!ふかく、だ!)
あたしはその勢いに耐え切れずタオルを山程持ったままその人と一緒に転倒してしまった。


「いってー…」
「わわ、大丈夫ですか!申し訳ないです!ついでに臭いですけどごめんなさい!」
「や…大丈夫だけど…お前こそ大丈夫?」
「あたしは平気ですこう見えてむきむきなので!」
「あー…ぶちまけちまったな。悪い!」


ふわふわとタオルが舞い散る中、ようやく見えたのは頭を擦りながら苦笑する赤髪のあの人だった。