やはり有名だけあってかっこういいのです。










「あっ、タオルあたし拾っとくんで丸井さんどうぞお先にどうぞ!」
「や…もういいや。どーせ怒られるし。っていうか、お前、」
「あ…はい、いつぞやのしつこい女でございます…」
「あー、久しぶりだな!幸村の彼女になったんだろぃ?よくやったなー!」


ニコニコと笑いながらあたしの頭を撫でる丸井さん。あたしは小動物か!と突っ込みたいがこれまた気持ち良い。
「えへへ、ありがとうございます」と笑えば丸井さんは「お前よく頑張ったなー」と言ってくれた。(昔はあたしの事蔑んでたのに、だ!)


「なぁ、幸村ってお前の前だと性格変わったりすんの?」
「えっ、あたしの、前、です、か、」


いやそりゃぁあたし幸村さんにちゅーとかされてしまった訳でにこりとか微笑んでくれるけど、けど!あたしの前だと性格変わるのかな…
だって幸村さんは部員にも優しいとか優しくないとかであたしにも優しくてあれ?もう意味分からない!――と頭がぐるぐる状態なあたしを見てか、丸井さんはまたにこりと笑って「お前、顔真っ赤っかだぜ?可愛いーなー」と頭を撫でた。


「も、もう分からんです!ギブ!ぎぶあんどていくです!」
「ぶっ、お前それ意味違うだろぃ」
「なっ!あたしこう見えても頭良いんですよ!」
「うん、知ってる。」
「得意科目は社会です!」
「あ、それ知らなかった。」


その間も丸井さんはにこにこと笑っている。(眩しい!)
丸井さんって(てゆうか、テニス部員って)本当に有名で、ファンクラブもあるそうで…やっぱ、かっこういい。是非とも一緒に並びたくないタイプだ!いやでもあたしは幸村さんが一番好きです、てへ。幸村さんが世界で一番かっこういい!


「お前何にやけてるの?」


…失礼しましたね。


「お前って面白いってよく言われるだろぃ」
「えっ、言われませんよ?丸井さんはかっこういいってよく言われますでしょ!」
「…言われない。どっちかっていうと『可愛い』。」
「あー…納得、です。」


「何だよそれー」と苦笑し、あたしの頭をくしゃくしゃと撫でる丸井さん。
なんかお兄ちゃんっぽいなー……、あぁ、そうだ!丸井さんには”裕樹”さんという弟がいるのだ!だから慣れているのかな、


「お前さ、よく見ると可愛いよな」
「何ですかそれ。褒めてるのか貶してるのか分かんないんですけど。」
「俺、お前の事気に入った」


そう言って丸井さんはニカッと笑った。一応「ありがとう…ございます?」と言うと「何で疑問系なんだよ」とつっこまれたが気にしない!
そして「お前、幸村の何処が好きなの?」と聞いた直後、何故か丸井さんの顔は真っ青になった。視線は、あたしの後ろ。
何だろう、と振り向いてみれば――そこには、なんと赤目となった優希さんが微笑みながら立っていたのだ。


「優希…さん?」
「あらちゃん。洗濯物ぶちまけちゃったのね」
「あ、ごめんなさい!」
「うふ、良いのよ?ちゃんは可愛いもの。――問題はお前。


優希さんが鋭い目線で丸井さんを睨みつける。それと同時に丸井さんの顔は引きつって後ずさりをする。
いったい、どうしたんだろう?


「いや…あの、その、実は、」
うっせぇ!お前あんだけ遅刻すんなって言ってんだろうが!マネなめてんのかゴルァ!!」
「め、めっそうもございません…」
「あぁ!?次遅刻したら…分かってんだろうなぁ!?」
「はい!申し訳ありませんでした!!」


土下座を1回して、丸井さんは立ち上がるとそれはとても速いダッシュでテニスコートの方へと走っていた。
あたしに振り向いた優希さんは


「さ、洗濯物しよっか」


といつもの微笑みであたしに言った。目は、普通に戻っている。
ぽかん、だ。優希さん、丸井さんに対して赤目になっちゃうのか…?恐るべし。あたしも優希さんだけは怒らせない様にしないと!


「あぁ…怖がらせちゃったかな。あたし、部員の前だと赤目になって…我を忘れちゃうんだよねぇ」


……恐るべし。