「ウォラァッ!!このやろっこのやろっ!」と乱暴に洗濯物を洗濯機に詰め込む優希さんは、「きったないなぁー、誰よこれーうふふ」と笑顔で洗濯物をする優希さんとはかけ離れた人物だった。















「ほほぉ…これで、ドリンクの完成という訳ですか!」
「うん、これで休憩時間になったらタオルと一緒に持っていくの」


目の前には大量のペットボトル。こんなにあるのに短時間で全部作り上げてしまう優希さんは神だ!
でも、優希さんは部員の前になると赤目になって恐ろしい人に変貌してしまう。
…という事は、ドリンクを配る優希さんは………


「私の場合ドリンクを顔面に投げつけちゃうんだけどね」


…恐るべし。


「えっと…じゃぁちゃんレギュラーに渡してくれるかな?私レギュラー以外に渡すから」
「えっレギュラーですか!?」
「うん、挨拶の意味も込めて」
「はぁ…分かりました」


挨拶、と言ってもだ。レギュラーは勿論の事あたしはテニス部員全員に知られていると思う。
幸村さんに毎日迫ってたもんな………恥ずかしい!!!

でも優希さんの心遣いを無駄にする訳にはいかないのだ!


「あ――調度休憩になったみたい。行こう、ちゃん」
「は、はいっ!」


レギュラー用のドリンクとタオルが入った箱を持ち上げて、優希さんの後ろをついて行く。
そして「じゃぁ、私はこっちだから」と言うと優希さんは部員の方へ歩いて行った。(そして多分赤目になった)

ひっひっふー、ひっひっふー、だ。落ち着け、落ち着け。
―――よし、いざ出陣!
普通…こういう物は偉い順に渡すものだろうか。えと、じゃぁ幸村さんに渡しに行こう!


「ああ、


ゆ、幸村さーん!!!
小走りで近寄ってくる私を見るなりにこりと微笑む幸村さん。


「あのっ、これ、タオルとドリンクです!」
「ありがとう、


ふわりと微笑む幸村さんを見て「ど、どういたしましてっではっ!」と走り去るあたし。
駄目だ、かっこういい!かっこよすぎる!うーわー、だ!もう顔が真っ赤だ!


「次は―――副部長さん…どこだろ?」
「…何か用か」
「っぎゃー!」


ぬっ、そうだ、この効果音が相応しい!「ぬっ」と後ろから低い声が聞こえて思わずあたしは叫んでしまった。


「叫ぶとは何事だ!たるんどるぞ!」
「も、申し訳ないっ!これタオルとドリンクでございます、ではっ!!!」


タオルとドリンクを副部長さんに無理矢理押し付け、ダッシュで逃げる。
ここここここ怖い!怖いよ!そして次は誰に渡せばいいの!?

半泣き状態でコートを走り回っていると、ドン、と誰かに体当たりしてしまった。
恐る恐る顔をあげると――


「ぎゃー!あ、アイムソーリー!!」
「――はぁ?」
「わ、悪気はないんです、ごめんなさい、ソーリー!!」


黒人の、確かジャッカルさん。
背が高くて怖くて頭光っててやっぱり怖くてあれこの人日本語使えるっけ!?とか混乱してて。
そんな時、後ろからぎゅ、と抱き閉められた。


ー、ドリンクー」
「わわっ丸井さん!」
「ちなみにソイツ、一応日本語喋れるから。な、ジャッカル?」


笑いを堪えながら丸井さんはジャッカルさんに問いかける。
ジャッカルさんは「当たり前だっ!」と言っててぎゃー!あたしまた勘違いを!慌てて「申し訳ありませんでした!ドリンクとタオルです!」と言ってジャッカル先輩に箱を差し出した。


「お、ありがとう」
「丸井さんもどうぞっ!」
「さんきゅ」


私に抱きついたまま前に手を伸ばしドリンクを取る丸井さん。
耳元で、ごくんごくんって音鳴る!ひえー、せくしーだ!せくしーだ!


「丸井センパーイ?何してんスか?」


………わかめ?