。良いニュースだよ」
「・・・え?」


山本くんと何とも言えない友好関係を築いてしまい、そそくさとレグランデへ帰ってみるといつもの様に笑みを浮かべるヒキさんの顔が。


「ニュース・・・って、何ですか?」
「この間の初仕事のおかげで、君の名前が裏社会で凄く有名になってる」


ゆ、有名!?
それって、あんまり私には好ましくないことなのではないだろうか。言葉を失い立ち尽くしているとヒキさんは嬉しそうに言葉を紡ぐ。(嬉しそうに、って!)


「幸い姿はあまり確認されてなかったからね。『レグランデの男』っていう情報しか流れてないよ。奴等が『レグランデ』って所まで嗅ぎつけた所は褒めてあげたいね。あと、マフィアの間では『ユダ』って呼ばれているらしい」
「っユダ!?」
「金に目がくらみイエスを裏切ったユダ・・・金で動くスパイにはうってつけの名前、ってことだろうね」
「え、ええ!?」
「連中、必死になって君の情報を探しているよ。良かったね」
「全然良くないじゃないですか!」


ヒキさんって・・・本当、何を考えているのか分からない!金に目が眩んでいるのは、どちらかって言うとヒキさんの方なのに!さ、最悪だ・・・。いつかはこうなるだろうなぁ、とは予測してたものの早すぎる。裏社会で有名なんて、常に命を狙われているような物じゃないか!


「そこで。が有名になると、依頼が山の様にくる訳だ。」
「(まさか・・・)」
「また、イタリアへ行ってもらおうか」
「!」


やっぱり来た!新しい仕事か、こんちくしょう!
ヒキさんの事だから、今日中にイタリアへ向かうに違いない。という事は学校にはまた『入院』と告げる、という事だ。・・・山本くん。ごめんなさい。何だか分からないけどふつふつと沸きあがる罪悪感。この世界で生きていくには、もうコレしかないんだ。どうあがいたって元の世界には・・・戻れないんだ。


「あの・・・今回は、何処のマフィアですか?」


恐る恐る、今回はキャバッローネみたいな有名なマフィアじゃなければ良いな・・・と念じつつ、ヒキさんの言葉を待つ。ヒキさんは腕を組みなおしニコリ、と笑うとゆっくり口を開けた。


「ボンゴレファミリー最強の暗殺部隊、ヴァリアーだよ」



プレリュード・完