「なんかマジで死んじゃえ。クリスマスの雰囲気にフワフワしてる糞共は禿げちゃえ」
「…お前禿げちゃえとか簡単に言っちゃ駄目だろ!」
「(死ねより禿げの方に突っ込むんだ…)ああもうマジ寒いよ。ありえねー。何でこんな時に呼び出すんだよ」
「おまっ…そりゃぁ、カレカノだからに決まってんだろ。」

それを言うなり顔をほんのり赤くさせてマフラー顔にうずめる宍戸。周りはカップルばっか。雪も降ってて寒いったらありゃしないんだ。

「え?カレカノって寒い日に密会するモンなの?」
「いや、だって今日クリスマスだろ」
「クリスマス?じゃぁクリスマスに会ってカレカノは何すんの?」
「………」
「………」
「………言っとくけどあたしは知らないよ?」
「………俺も分からない」
「…。」

何だこの雰囲気は。あたし達には初々しいカレカノの雰囲気は似合わないんだってば。元々あたしと宍戸は「付き合っちゃう?」「おう付き合ってみよーぜ」みたいな軽いノリで付き合いだしたのだ。
――うん?カレカノって言うよりは友達の方が近い気もする。だって、

「あたし達さぁー。カレカノっぽい事した事ないよね」
「あー…そうだな」
「はぁ――宍戸もたまには彼氏っぽく積極的になってもらいたいもんだわ」
「彼氏っぽく、積極的にっ、て……どんな感じだよ?」
「例えば、こう。」

宍戸の手を繋ぐ。勿論繋ぎ方は恋人繋ぎ。うわ、手ぇあったかいんだコイツ。あたしの手は冷えてるというのに。隣の宍戸をちらりと見上げると、バツが悪そうに下を向いていた。

「他に…彼氏っぽい事って何だ?」
「自分で考えろよマジ使えない彼氏だな。禿げろ是非とも禿げろ」
「――……」

その瞬間。
宍戸が急に立ち止まってあたしの肩を両手でガシッと掴む。宍戸の、真剣な瞳につられてあたしの顔も自然に真顔になる。

「宍戸、何?」
「あー……うん、」
「……」
「眼、瞑って」

――は?
意味が分からないけど、宍戸の言われた通り眼を瞑る。すると、いきなり唇に柔らかい何かが触れた。
吃驚してあたしが眼を開けるのと、宍戸があたしの手を引っ張って早歩きで歩き出すのはほぼ同時だった。

「宍戸、今―」
「わ、悪かったな!この位しか思いつかなかったんだよ!」
「……ぷっ」
「笑うな!」

真ん前を歩く宍戸の耳はまっかっか。多分コレは寒さの所為なんかじゃなくてきっと照れまくってこうなってるんだろうな、とあたしは思う。

「宍戸」
「んだよ!」
「照れんなよ」
「照れてねぇよ!」
「……かっわいー」
「……」
「宍戸」
「…んだよ」
「好きだよ」
「―――うん、俺も」


そうは言うものの彼の耳は赤みを増すだけ。それを見て愛しいなんて思っちゃったあたしは多分きっと宍戸の事大好きなんだろう。
(まずは名前で呼んでみようかな。軽いノリだなんて本当は嘘なんだよ。あの時のあたしの心臓つったら爆発してもおかしくなかったよ。あぁ、なんか良いね、クリスマスって。 貴方もあたしも素直になれるかな