反則やわ。
どくん、と心臓が波を打つ。好い加減あの鋭い目はやめていただきたい。目が会う度にどくんどくんと胸の奥から何かが吹き上げる。



「でなー、そん時にな…――聞いとるん、?」
「う、あ?おう、聞いとるで白石くん!で、どうしたん?」
「もうええですー」
「ごめんな白石、ぼーっとしとった。かんにんしたってや」


慌てて視線を財前くんから目の前に居る白石くんに移す。
だけど白石は機嫌を損ねたのかぷい、とそっぽを向いてしまった。


ー、俺の話も聞いてやぁ!」
「おー、金ちゃん!聞いたるで!」
「俺の話もきっけー♪」
「気持ち悪い千歳の話は聞かん」
「…酷いばい」
ちゃんっこっちの話も聞いてよね♪」
「…浮気か?」
「いやーん!浮気やないって」
「おーおー、みんな元気やなぁ、」


ざわざわ騒がしいあたし達から1歩離れ、ラケットを肩に担いでる財前くんとまた目が合う。
なんだ、何であたしを見るんだ。分かんない。何が何だか、わかんないけど、ドキドキする。


「ざいぜーん。財前も聞いたってや!千歳の話、ホンマアホっぽいで!」
「んあー!金ちゃん酷いっ!」
「千歳ホンマキモい」


財前くんの視線が、金ちゃんへと映る。一瞬ほっとするけれど、そんなのも束の間。今度はさっきよりも、激しく心臓が波を打つ。(多分、それは財前くんが近付いて来たからなのかもしれない)(や、きっとそうだ。


「何ですか先輩。またアホな事したんスか」
「アホじゃなかと!」


財前くんを交えて、再び騒がしくなるあたし達。
財前くんが、近い。彼のピアスが、よく見える(って、何考えてんだあたし)

目も合わせられずに、ただただ地面とこんにちは。「アホやなー、」と言う彼の言葉に、体全身が反応する。(ああ、静まれ心臓)


?どうかしたん?」
「え、あ…何でもないで白石。」
「顔真っ赤やで?」
「(お、おしたりこのやろー!それを、言うな!)」


指摘の言葉で、更に顔の熱は上がってく。抑えてたのに、もうやだ。止まんない。
そんなあたしに財前くんは近寄り、あたしのうなじを右手で抑えて自分のおでことあたしのおでこをくっ付けた。


「体温高いで、先輩」


そんなん誰の所為やと思ってるの!ていうかていうか、おでことおでこごっつんこ、って、何すんねん!何がしたいねん!あーもう、絶対気付いてやってるな。あたしが財前くんの事好きやって気付いてるんやな。酷い男や!こうやってあたしの反応を楽しんでるに違いない!ほら、今だってにこ、って笑って、胡散臭いわその笑顔!もー、どうしてくれるんや!金ちゃん真っ赤やないの!あたしの顔だって多分もっと真っ赤になったわ!ああもう、何か言い返したいのに返せない。本格的に、困った。

呼吸さえも忘れる。