亮が戦場に行く事になったのを知らされたのは、その5時間前だった。ふざけんな。覚悟はしてたよ。だって亮は特攻部隊だもんね。いつかは戦場に行くこと、知ってたよ。あたし達が生まれた時からもう戦争は始まってたし、それが当たり前だと思ってた…ていうか、思ってるし。男は戦場に、女は医療部隊に。Sir destiny あんた、人の命を転がして楽しいだろうね。笑ってるんでしょ?あたし達がこうやってもがいているのを。

「どうして言わなかったの」
「別に、お前には関係ないだろ」

やっとのところで帰ってきてもね、重傷負ってる訳じゃん。その重傷が、半端ないんだよ。殆どが助からないんだもん。運良く助かったとしても、また数ヵ月後にはまた戦場に送られる。Sir destiny あんた、本当残酷。どうせ亮だって帰って来ないんでしょ?特攻部隊は戦場に送り出される部隊の中で一番残酷な部隊だもん。その名の通り特攻する部隊で、小型ジェット機に爆弾を積んで爆発と共にジェット機ごと突っ込むんだ。

「あと1日2日の命ね」
「ふざけんじゃねぇ。お前だってそのうち死ぬだろ。いつ敵が攻め込んで来るか分かんねー」

Sir destiny あんたでも、この気持ちは動かせないよ。「好き」じゃ現せないくらい好きなんだよ。「愛してる」って言った方がこの気持ちには合ってる。でも、亮と一緒に居れるのはあと5時間――いや、あと3時間もない。少ない時間。3時間後にはあたし、何を支えに生きれば良い?あんたが居ない世界なんてガラクタも同然だよ。

「亮知ってる?昔の人は80歳まで生きていたらしいよ。あたしは80まで生きれるかもしれないけど亮はもうすぐ死ぬね」
「俺は国の為に格好良く死ぬけどお前、多分敵国に奴隷にされた挙句に酷い死に方するぜ」

刻一刻と時間は過ぎてく。せめて死ぬときだけでも傍に居たかった――だなんて、そんな綺麗な事思わない。もしその時あたしだけ生き延びちゃったらどうするの。きっと隣りにあんたの死に顔があるんだよ。見たくない。そんなものは見たくない。Sir destiny 亮を生かして下さいなんて思わないから。亮を持って行かないで。せめてあたしの心の中に、思い出として。そんな事、心で思ったっていつかは亮の事忘れちゃうんだ。名前も思い出せなくなって、声も、顔も、感触も、全部全部忘れるんだ。(まあ、そこまで生きてるか分からないけど)

「亮なんかに会いたくなかった。一生死ぬまで会いたくなかった。」
「俺だってお前なんかに会いたくなかった。生まれ変わっても会いたくないね」

Sir destiny 泣きたくないのに、どうして涙は溢れ出るの。あんた、きっと笑ってるんだ。あたしと亮のこと。亮は後ろを向いて、ゆっくりと歩いて行く。ああ、もうお別れね。行かないでなんて言わない。最後に笑顔が見たかったなんてわがまま言わない。だから、この後姿だけでも、目に焼きつかせて。

「バカ。亮のバカ。大嫌いだ。――、でも、愛してたんだから
「バカにすんなよ。俺だってお前のこと愛してたよ






Sir destiny

                                        亮なんか大嫌いだ。そんな震えた声、震えた肩、大嫌い。大嫌いなんだから。