「君をもっとーあーいをもっとーほっしっいっのっさー!」

2年生の廊下を大声で歌を歌いながら歩いて行く。後輩達は「ちわーっす!」「先輩頑張って!」とあたしに声を掛けてくれる。うん、日吉くんはあたしの物だよ!と返答すると、ぐっ!とウィンクしてくれた。

「せなかまーでいーっぱいで!めがさーめるーよーなー!」
「…先輩、止めてくださいっ!」

ガラッ!と勢い良く教室の扉が開く。うわお!日吉くんのご登場だ!相変わらずかっこいーなー!

「え、愛くれるの?」

くれるんでしょ?とあたしは手を日吉くんに差し出す。日吉くんといえば「はぁ、」と溜息をついてあたしの腕を引っ張って歩いて行き、廊下を曲がった。(此処、実は人通り少ないんだよね!)
すると日吉くんはようやくあたしと向き合って目を合わせてくれた。

「……、毎日廊下でああいう行為されると恥ずかしいんですけど」
「日吉くん、あたしの事嫌い?」
「…嫌い、ではないです」
「!!!」

ツーンとそっぽを向く日吉くん。だけどその耳は真っ赤だ。可愛い。

「あたしはね、日吉くんがだーいすきっ!」
「〜っ、そ、そういう事大声で言わないでください!」
「え、だって本当のことじゃん」
「迷惑なんですっ!」
「…日吉くんは、やっぱあたしの事嫌いなんだ…」

うん、そうだよね。やっぱよく知らない先輩が自分の事好きとか言っても迷惑だよね、そうだよね。
あたしはしょぼしょぼと下を向く。ちょっと泣きそう。
でもあたしが日吉くん好きなのは本当だし、ああ、でも嫌われたくない!
…よし。じゃあ今度から、大声で歌うのはやめよう!こそこそっと歌おう!
「日吉くん!じゃあ今度からあたし小さい声で歌うね!」そうあたしが言おうとした瞬間、ぐい、とYシャツの襟を捕まれる。
そして唇に軽く何かが触れた。

「…内緒ですからね!!」
「……」

むん、と日吉くんは口を横一文字にして、そんでもって耳をこれまた真っ赤にして、すたすたと去って行ってしまった。

「…ほ、ほわー!!!」

「日吉くんにキスされちゃったよーう!」と叫ぶと、顔を真っ赤にした日吉くんが慌てて走って戻って来た。