本当に大好きならその人のことを思ってよっぽど確信がない限り告白なんてしないって。あほじゃねーの。「知ってたの、でも、伝えたかっただけなの」とか、それがどんだけその人にとって重荷になってるか分かってんのかよ。振られるのも辛いけど。振る方が辛いとあたしは思う。だってさー振られたら「気持ちは伝えられたんだから!」とか色々いちゃもんつけて立ち直んじゃん。でも振った方はさあ、罪悪感やらなんやらですっげー複雑な気持ちな訳よ。それが仲良かった”友達”だったら尚更。あたしは親友並に仲良かった男子に告られた時はすっげー悲しかったね。どうやっても今までの仲には戻れないじゃん。それにあたしは友達としてソイツを見てきたのに。ソイツはあたしの事、どういう目で見てたんだろう、って思うとすげー気持ち悪い。やだもん。恋愛対象外だもん。恋愛対象外の友達に告白されたって困る。気持ちを押し付けるなんて、ちょー無責任じゃんか。このやろーあたしはぜってーいわねー。その方があたしにとっても楽だし。もういいんだもん。これが、あたしなりの愛し方。気持ちなんて、絶対押し付けない。






なのに、コイツは。
(にこにこと人懐っこい笑みで近寄ってきて嘘なくらいの量の愛を囁く。あたしの大嫌いな、気持ちを押し付けるやり方。)





ー!今日もげにまっこと綺麗じゃのー!」
「いやなんですかあんたまた来たんですか。すげー迷惑なんで早急に去ってください私の前から消えて」
「あっはっは!おまんはまことに照れ屋さんじゃのー!」
「そうですね私照れ屋さんですああ恥ずかしくて貴方の前に出る事も出来ませんさようなら」
「常に棒読みなところも可愛いのう!なんちゃーがやない、じこじこ慣れていけば良か!」
「なんかもう本当ウザいんですけど。ふざけてるんなら本当迷惑なんですけど」
「わしは本気じゃ!ほたえてなんかなか!」
「じゃあ・・・証拠見せてくださいよ。」
「証拠?良かよ!の為ならなんでもするきに!」
「・・・坂本さんの持ってる船、全部あたしにください。そしたら信じる。」






ほら、証拠見せて
(明らかに無理な事を注文。こんなことすれば流石のコイツだって引く筈。「それは流石にいかんぜよ」って言う筈。)





「わしの・・・船全部、がか?」
「そうですよ。ぜーんぶ。ぜーんぶあたしに下さい。本当に好きならこんくらい出来ますよねー」


にこりと効果音がつきそうな笑みで坂本さんを見つめる。坂本さんは船を使って仕事してる訳で、船がなければ何も出来ないただのプー太郎でしょ?答えなんて1つに決まってんじゃん。よし、「それはいかん」って早く言え。そしたら「ほらやっぱり遊びだったんじゃん。もう来ないでくださいね」って言ってやる。我ながらひでー女だとは思うけどさ、だって本当駄目なんだ、この人。あたしと愛し方が正反対だもん。ほら、ぶっちゃけ言うとあたしこんな捻くれた性格だからこんなストレートに愛をぶつけられたことは初めてで・・・うん、ちょっと戸惑ってるのかもあたし・・・って、なに自分解析始めてんだろうわーばかばかしい!そして当の本人と言えば、何やら真剣な面持ちになりぼそぼそと何かに向かって呟く。え、なんだ。ついに壊れたかこの人(っていうか元から壊れてたか)


「さあ、くれるんですか?くれないんですか?どっちなんですか?あたし気が短いんで早めに決断お願いしまーす」
「・・・、」
「ほらー答えられないってことはやっぱり・・・」


「やっぱり遊びだったんじゃないですかー」その言葉は、ゴゴゴゴゴという何やら不気味で大きい音にかき消された。今まで日なただったのにすっと広がる影。・・・もし、かして・・・。そう思って空を見上げてみれば、巨大な巨大な大きい船が数隻。







やりやがった。
(うそ、うそ・・・、マジで、これマジ?いや本当ありえないんですけど・・・ってマジ?!マジで?!)






これがわしのへの愛ぜよー!


そういって坂本さんは腕を広げてニカ!と笑う。・・・アホ、だ。(クレイジーマン!)











その後船からは笠を被った美人さんが「頭!頭!無事か!?」と叫びながら出て来た。「あっはっは!ご苦労じゃったのう陸奥!」と笑う坂本さんを見るとその美人さんの額にはピキピキと音が立ちそうな勢いで青筋が浮かぶ。するとバッシーン!!という音がいきなり響いた。「頭・・・また『緊急事態』って嘘ついたな!」「緊急と言えば緊急じゃ!わしの恋の行方がかかって・・・」バッシーン!!また乾いた音が響く。うわあ、綺麗に入った。「・・・このクソ女ー!2回も平手打ちすんじゃなか!!」「うっせー黙れこの天パ!」「あっはっは!!殴って良い!?」この2人の関係ってなんかよく分からないんだけど、それ以上に分からないのがなんであたしドキドキしてるんだろう。(え、いやまさか・・・それは、ないよね!?)