もしも。本当にもしもの話であって事実とかそんなん考えてない感じの話で。真面目に例えばの話だけど、もしアイツがあたしのこと好きだったらどうなるんだろう。つ、付き合っちゃったりとか手繋いじゃったりする感じ、なのかな・・・って、何考えてんだあたし気持ち悪い!ちょ、誰かこんなあたしを叱ってくれませんか。


「丸井くんかっこいー!」
「もう、可愛いっていうか母性本能くすぐられるよね」
「ほんっとかっこいい!はどう思う?」



周りの人間はあんたのこと顔で選んでるけどあたしは違うんだよ。本当だよ。顔とかじゃなくてあいつ自身に惹かれた。ちゃんとあいつを見てるよ。ガムを噛んでることだってただ単に好き、とかじゃなくていつも100パーセント実力を出せるようにするためだとか案外奥が深そうなこと考えてそうで「今日の晩飯なにかな」とか考えてることとか全部全部知ってる。あいつ自身が話してくれた。そんなことに他の女の子より優越感感じたりしちゃって。「女にこんなこと話すの初めて」ってにか、って笑うあいつ見てもしかしてこいつ、あたしのこと好きなんじゃないかとか考えちゃったりして・・・って、本当止めようこういうの。あたし知ってる。自惚れっていうんだよね、これ。第一あいつはあたしのこと好きじゃないしあたしはあいつのこと好きじゃない・・・よ。うん、錯覚錯覚!今なら止めれるよ!好きじゃない好きじゃない好きじゃない。


ー!今日HR終わったらケーキ屋いかね?」
「えー1人で行けよ」
「1人じゃ恥ずかしいだろぃ」
「しょうがないな。優しい様が一緒に行ってやろう」
「おーさんきゅー。お前くらいしか誘える女いねーんだよ」
「(…どういう、意味)」
「お前と一緒に居ると男友達といるみたいで楽なんだよ」
「っ――あ、あたしもあんたと居るのと女友達といるのとさして変わんない。」


自己嫌悪。何傷ついてんだ。こんな乙女的思考はあたしに似合わない。激しく似合わない。クレヨンしんちゃんにシャネル、みたいな感じで拒否反応を示してる感じ。そうか、あたしはしんちゃんか。子供はブランドを欲しがらない、欲しがっちゃいけない。我侭だからね。でも手くらいは伸ばしてもいいんじゃね?興味を持つくらいは許してくれるかな?ってなんかあたし詩人みたいだ。気持ち悪っ!


「これからのことジャッカル2世って呼んでもええ?」
「え、何で?」
「なんかさして変わんないから」


あーむかつくむかつく!絶対悪気はないんだろうけど、すっごいむかつく。その眩しいくらいな笑顔がむかつく。あーむかつくむかつく。こんなヤツ、


「丸井」
「んだよ」


ぐい、と丸井の襟を掴み顔を近付け、触れるだけのキスをする。時が止まる。女の子達の「きゃー!」という声が聞こえて来る。なにやってんのあたし!駄目じゃん!駄目じゃん!


「大嫌いだバーカ」


あたしは何処までアホなんだろ。なんでこんな強引な気持ちの伝え方、を!ふ、振られることなんて重々承知してるけど、気持ち知ってほしかっただけなのに!






もしも 本当にもしも


君も僕の事を


思ってくれてたら


なんて考えてる僕を


どうか叱って


やってくれないか。