宍戸亮はなにかっていうとクラスメイト、としか答え様がない。なのに友人達は必要以上にあたし達の関係を聞きたがる。最低でも1日1回は聞かれるしこの前なんかとうとう違うクラスの向日まであたし達の関係を聞いてきた。


「よー
「あ、宍戸。おはよー」
「お前昨日メール返さなかったろー」
「あ、ごめん。寝た」
「そんな事だろうと思ったぜ」
「でもあたし達はホラ!離れてても同じ空の下で繋がってるじゃん!」


そーだな!以心伝心だなー!と笑いながら返してくれた宍戸にあたしも思わず笑い返す。この雰囲気があたしには凄く心地良い。なんていうんだろう。心がほんわかする、とでも言ってみようか。…友人達はこれを見て付き合ってるんじゃないかって噂するんだろうけど。


「じゃあ今日あたしがメールするよ」
「分かった。待ってる」
「おうよ」


なるべく平常を装いながらもそう答え、高まる鼓動を落ち着ける。
友達以上恋人未満、って言うのかな。少なくともあたしの中ではその言葉がピッタリ来る気がする。友達って言ったら「ん?」ってなるし、かといって恋人と聞かれたらそうでもない気がする。うむ、「友達以上恋人未満」だなんて青春くさい言葉いいじゃないか。
その後も軽く言葉を交わして宍戸は自分の席へ。その途端に近くに居た女の子達が宍戸に笑顔で話しかける。あー、そうだ忘れていた。宍戸は女の子達に人気あるんだよな…。たまに嫉妬の視線を向けられる事もあるからそのことはよく分かってる。……心なしか宍戸、あたしと居る時より笑ってないか?…なんかデレデレしてる気がする。確かに麻美ちゃんは可愛いけど、さ。え、なに?「昨日のメールだけどさぁ!」…?あーうん。ふーん。宍戸もあたし以外の子とメールしていた訳だ。ふーん。へーん。


ちゃーん!おっはよー!」
「ぎゃへ!」
「昨日どうしてメール止めたのー!?俺すっげぇ悲しかったんだよ?」
「ごめんね慈朗くん。あたし昨日寝ちゃったんだぁ」
「酷いC〜!」


後ろからぎゅっと抱きしめられて柔らかくふわふわした金髪があたしの頬にかかる。あたしと宍戸がこういうことすると間違いなくからかわれる筈なのに慈朗くんとだと全くそういう事はない。それは彼の性格の所為もあるのだろう。他の女の子にもにこにこしてるから別にこれはあたしだけではないのだ。


「おれ今日メールしてもいいー?」
「勿論!待ってるよ」
「えへへ、ありがと」


頭上からこっちまで嬉しくなるような声が聞こえてくる。なんだかこんな会話、さっきもしたよなぁと思い出しながらもその相手をちらりと見やれば偶然なのか彼もあたしを見ていてばっちりと目が合った――と思ったらすぐに避けられた。
意味もなくどきどきする。もしかして嫉妬してくれたかなぁ、なんて思いが頭を巡ったけれどそれはすぐに否定された。そういえば宍戸も他の子とメールしていたんだった。


ちゃん大好き!」
「――あ、あたしも大好きだよ!」


流石にこれは。流石にコレはちょっと戸惑ったけれど、これは慈朗くんにとって特別な意味はないのだ。慈朗くんはあたしをもう一度ぎゅ、と抱きしめ笑顔で手を振りながら自分の席へと向かった。



* * *



ーノート貸して」
「宍戸爆睡だったね」
「あれは部活のエネルギー補給!」


言われてなんだか納得してしまった。男子テニス部は体力使うもんなぁ。あたしは帰宅部だから運動部の辛さとかよく分からないけど、男テニの凄さは噂でけっこう聞いてる。
しまいかけた机の中のノートを引っ張り出し宍戸に渡す。


「あ、じゃあさ、あたし次の授業寝る予定だから次はそっちが貸してね」
「おー…分かった。努力してみる」


あたしから受け取ったノートを肩に乗せ眠そうに自分の席へ戻っていく宍戸。3、4歩進んだところで何かを思い出したように振り返った。


ー」
「ん?」


ぼそっと呟くように。だけどまっすぐに。顔も赤くせず淡々と。



「俺は大好き…っつーか、愛してるから」









それが彼の嫉妬だと理解したのは10秒後