「好きなんです、うう…」
「分かったから…泣かないでよ」
「そっちこそ分かってるんですか、好きなんですよ。…これで4回目の告白ですけど」
「分かってるよ。好い加減泣き止まないと噛み殺すよ?」
「嘘ですね。分かってるなら告白してきた子に噛み殺すなんて言いませんよ、」
「…はぁ」
「何ため息着いてるんですか、うう、噛み殺しますよこのやろー」

こいつ最低だ。ていうか、恥ずかしい。雲雀さん明らかに嫌そうな顔をしてる。いやいや、でも告白出来ただけでも凄いぞ(4回目だけど)だったあの相手はあの雲雀さん。不良の最先端を突っ走る風紀委員だ。
私、は今まで告白を雲雀さんにしつこくしてきたが、いつも華麗にスルーされてしまうのだ。でも今日という今日は逃がさない。わざわざ応接室まで来たんだ!(には飽きられたが)
ぐずぐずと鼻を鳴らしながらソファーに座る雲雀さんを見つめる。―うう、相変わらず綺麗に整った顔ですね―なんて呟いてみたら「はぁ」とまたため息をつかれた。あんたその色っぽい姿でどれたけの女の子…いや、女性を落としてきたんですか。もしかして無意識ですか。
雲雀さんはしばらく何も言わずに居た後、そっとソファーから立ち上がる。

「約束して」
「何をですか。”もう僕に会わないこと”とか言ったら死んでやりますからね」
「遅刻をもうしない事。風紀委員に迷惑を掛けない事。それから…すぐ泣かない事」
「(華麗にスルーですか…)なんでそんな事守らなきゃいけないんですか。」
「…はぁ」
「雲雀さん。溜息3回目ですよ。あーあ、幸せが3回逃げ――っ」

雲雀さんが近づいてきたと思えば、私の唇に押し付けられる何か。目の前には雲雀さんの顔。わわ、睫長い。鼻高い。私の身長に合わせる為か少し前屈みになってますね、雲雀さん。
――てゆうか、これ、もしかして

「……き、す」
「…わざわざ声に出さないでよ」
「だって、雲雀さん、なんで、私に、きす、なんで、」
「分からないの?」
「分かる訳、ないじゃないですか」

むす、と不機嫌な顔をする雲雀さん。畜生、そんな顔も綺麗なんですね。『雲雀さんノート』に書き足しとこう。

「―好きだから」
「はっ?誰をですか」
「キミ」
「……え」

相変わらず雲雀さんは不機嫌な顔で眼を逸らしたまま。ちょっと、今なんて言いましたか。わたしが、好き?

「嘘、ですか」
「本当」
「だって、今まで私の告白華麗にスルーしやがったじゃないですか、」
「あんな人前で告白されれば誰だってスルーするよ」
「――本当、ですか」
「本当」

一瞬、頭が真っ白になる。そして徐々に赤くなる私の顔。ひ、雲雀さんが、わ、私を。止まったはずの涙が、また溢れ出す。

「うう――っく…ひ…」
「”すぐ泣かない事”…約束したばっかなんだけど」
「だって、雲雀さん」
「――…はぁ。」
「ううう…もう好きです好きです雲雀さん。大好きです」
「―?」

がば、と雲雀さんに抱きつく。うわぁ、雲雀さんの匂いだ。…『雲雀さんノート』に書き込まなければ。(てゆうか、そんな事考えるんじゃなくて、)
涙が、止まらない。好きなんですよ、本当。たくさんたくさん大好きなんですよ。しばらく雲雀さんの肩に埋もれてると、背中に雲雀さんの手が回って来る。うわ、うわ、もしかして抱き合っちゃってますか、コレ。

「僕も好きだから。」
「う…雲雀さん、私の方が沢山大好きですよどうしようって位好きですよ」
「うん」
「絶対離してやりませんからね私。嫉妬深いですよ。雲雀さんが(ありえないだろうけど)私以外の女と仲良くしてたらグーで殴りますよ、両方」
「うん」
「あーもう大好きです雲雀さん結婚してください」
「……はぁ」

いいんですか、いいんですか?こんなに人を好きになっていいんですか?


 


    
  
       

「…鼻水付けないでね」
「え、もう遅いですよ」



※最後の歌詞はRADWIMPS『いいんですか』から