柳生のアドバイスを受けて数日。仁王は未だに動揺を隠しきれずにいた。

ともっと喋りたくないのか?そう聞かれてしまえば否定はできない。しかし今の仁王はと目が合うだけで、挨拶を交わすことが出来るだけで満足しているのだ。


「(話す、っていっても・・何話せば良いんじゃ・・)」


机に肘をついて俯き、自分の頬を両手でつつむ。教壇の上では教師がHRを始めていた。どうやら今日は席替えの日らしい。全く話を聞いていなかった仁王は突然回ってきたクジに疑問符を浮かべながら、とりあえず、と適当にクジを引いた。その様子にクラスの女子達が釘付けだったのは言うまでもないだろう。

仁王が手にした番号は、『13』番。即座に「13日の金曜日」という単語が頭の中に浮かび上がる。不吉だ。

クラス全員がクジを引き終えたところで、教師が黒板に座席表を書き適当に番号を散りばめていく。書かれた番号を持っていた者から「〜番は誰だ!?」だとか、そんな喧騒が広がっていく。

仁王はもしかしたらの近くの席になれるかもしれない、なんて淡い期待を持つが、即座にその可能性を否定した。なんていったって13番だ。そんな幸福を運んできてくれる筈がない。


「よし、じゃあそれぞれ席を移動しろー」


教師の合図と共に生徒達は新しい席へと移動する。仁王の新しい席は窓側から2番目、後ろから2番目の割と人気の高い席だ。


「(・・あ、)」


自分の新しい席となる場所の隣に、の姿が見えた。自分の番号の書かれた紙と黒板を交互に見ながら、窓側へ机をくっつけた。


「(嘘・・じゃろ・・!?)」


急にドキドキと高鳴る心臓に戸惑いながら、の元へ近づく。は自分の姿を見つけると、小さく笑った。


「におーくん、ここ?」
「・・ん」
「じゃあ隣だね。よろしく」
「ああ」


一瞬だけの顔を見て、すぐに視線を逸らす。の笑顔があまりにも可愛く、自分の心臓が耐えきれそうになかったからだ。

仁王のそっけない返事を受け取ると、は前後の席となった生徒達とも挨拶を交わす。仁王は俯き、思わず零れた笑みを隠すために片手で口元を覆った。



His favorite number


13という数字が、なんとなく好きになった。