4時間目はとても長く感じた。1分1分が長くて、「今何分経った!?」と思って時計を見ても4分しか経ってなかったり・・。
あまりにも暇すぎたので、俺は1分1分カウントしてった。ノートに1から30まで数字を書いて、1分過ぎるごとに1分ずつ消していく。

残り10分が異様に長い!いつもは授業中も寝ている芥川も、今日はバッチリ起きている。気持ちが高ぶっているのか、周りに執拗に話しかけ先生に注意されていた。


キーンコーンカーンコーン


「ここ出るから覚えておくように。では、起立――あ!向日芥川宍戸!戻りなさい!」
「先生すみません腹痛です!」
「頭痛です!」
「腰痛です!」
「神経痛です!」


チャイムと共に走り出す俺達に、先生は戸惑った声を出す。
4人の中で1番最後に教室を出ることになった俺はちらりと先生の顔を盗み見たんだけど、大して気にもせず(まぁいつものことだし)溜息をついて号令を掛け直してた。


「おい!楽しみだな!」
「もう裏門に来てるかな!?」
「来てないだろ!あと10分もあるぜ!」
「くっそ〜!まじ腹減った〜!」


そう言いながら俺の目の前を走る向日の左手には1万円札が握り締められている。もちろん4枚のピザは割り勘だけど、それを合計して向日が払うことになっている。
氷帝学園=金持ち学園=氷帝生=金持ちっていう図式が成り立つ訳で、みんな財布には1万円が入っているのはほぼ常識。でもそれを他校の友達に話したら殴られた。なんでだろうな、なんてトンチンカンなことは思わなかったけど、かわりにやっぱり変なんだよなとは思った。ちなみに俺は数少ない庶民派だ!・・いや、氷帝学園に通う以上そこそこのお金はあるだろうけど。


裏門へ一番近い校舎の出口を飛び出して、俺達は我先に校門へ走る。最近ようやく暖かくなってきたところだけど、やっぱりまだ風は冷たい。でも今は調度いいくらいの風だった。

裏門へつくと、調度宅配の人も着いたところだった。



さまでいらっしゃいますか」
「はい!」
「お届けです。9千と200円になります」
「はいっ!」
「800円のお返しです。どうもありがとうございました」


あ・・れ?案外簡単に済んだぞ?もっと困難が待ち受けているかなと思ったのに。まあ、何も起きないのが一番ですけどね!
ピザを受け取った向日と芥川を見ると、すでに箱を開けようとしていた。


「おい!まだ開けんなよ。此処で食ってるとこ見られたら怪しまれんだろ!それは激ダサだからよ、教室で堂々と食おーぜ」
「うぅ・・じゃあ早く行こー!」
「おい!走んじゃねぇーよ天パ羊!」


折角のピザが崩れるだろ!と声を荒げても芥川にはもう届いていない様だ。加えて向日も芥川の背中を追って走り出してしまった。
俺と宍戸は顔を見合わせて溜息をつき、でもやっぱり嬉しいので笑いあってから2人の後を追った。










「っしゃあー!いただきます!」
「「「いただきます!」」」


ちゃんと食前の挨拶は忘れずにね!でも向日は言いながらピザに手をつけてたけど。
C組で昼食を取っていた生徒はみんな俺達をびっくりした目で見つめている。中には羨ましげに声をかけてきた奴もいたけど、芥川が1きれもあげない!と断言した所為で寂しそうに帰って行った。


「んまー!」
「チーズ堪んねー!」
「やべぇ!俺ミントからチーズに乗り換える!」
「おれはず〜っとチーズ大好きだったC!」


4枚のピザはみるみるなくなっていき、無事完食!まぁサイズが小さかったし・・芥川がすっごい食べるんだよな!もう食べれない、って言うと芥川がビシッと挙手して「じゃあもらってい〜い!?」って目を輝かせて聞いて来た。勿論だ、芥川よ食べなさい・・。でも芥川ってよく食べるのに背小さいよな、って宍戸と話してたら向日が少し気にしてるみたいだった。お前は可愛いから良いんだよ(ってクラスの女子が言ってた)


「なんかさ・・勲章が欲しいよな」
「食べました!的なやつ〜?」
「じゃあさ、このピザの蓋のマーク切り取って黒板の上飾っとこうぜ!」
「良いなそれ!」


俺ら馬鹿だからな、後のことは気にしないでその作業を進めた。4人でたまに爆笑しながらはさみで切ってって、4つの切り取った蓋を黒板の上に飾る。
勿論それは、5時間目先生が教室に入ってきた瞬間バレて職員室に呼び出された。
馬鹿だよな、俺ら。こんなことしなければバレなかったのに!


でも、跡部たちにバレなかっただけ良いよな!って励まし合ってたらその日の部活、いきなり跡部の罵声が飛んできた。
背後にはにっこりと笑った忍足と滝。


「テメー等はホンットにうちの部活の品を下げる気かよ!!」
「で、でもあとべえ、校則には・・」
「そういう問題やないこと、分かるやろ・・?」
「1人許可したら、みんな許可しなきゃいけなくなる。集団生活をしている以上それは無理なことだよ」


反論した芥川に心の中で小さな拍手を送る。よくこの3人に口答え出来んな!
叱られてる時、不意に宍戸と目が合ったので変顔をしてみたら宍戸が勢いよく噴出した。そして跡部に殴られてた。ドンマイだ。
でもその時俺もニヤニヤしてて、それが見つかって滝に笑顔でげんこつされた。痛い!そして怖い!!

でも、何で跡部たちにもバレたんだ・・?

最初の頃は、俺達が悪いことをすると先生は連帯責任、ってことですぐに跡部にそのことを伝えてた。だけど1年前くらいからはもう諦めたのか跡部には伝えられなくなった。
だから悪戯がバレる時は、職員室や教室で怒られている時、直接跡部たちに見られない限りはバレなかったのに。今回怒られてるところ見られてないし・・何でだ?

そう思ってさりげなく辺りをきょろきょろしたら、かなり遠くの方で日吉がにやりと不敵な笑みを浮かべていた。

お  ま  え  か  !  !

ちくしょう!見てやがったな!?ピザ受け取ったところか、怒られてるとこ、見てたな!?そしてチクったな!?この野郎!下剋上とか思ってるだろ!


「こら!テメーどこ見てやがんだ!」
「すみません!」
「本当・・、そっぽを向けない様に目でも潰そうか?」
「(それそっぽ向くところか何も見えなくなる!)」」


俺が怒られてるところを見た日吉は、フッと笑って部室へ戻っていった。
うわ〜・・
ム  カ  ツ  ク  !  !


「おい!!いい加減にしろ!」
・・監督に言うて準レギュも降ろしてもらおか?」
「もうまじごめんなさい!」


このやろう!

ちなみにこの日の俺らの練習は、他の人の2倍の量だった。