「大体お前がいけないんだろ!アレは!」
「――はぁ!?意味わかんないし!アンタが余所見してたから悪いんでしょ!何見てたのよ!」
「それはお前の事見てたに決まってんだろィ!!」
「意味分からんし!!」

今は、2人一組の調理実習の時間。
今日も2人はまわりくどい恋愛劇を演じておりました。
周りの生徒達は「またか」とため息をつくと、各々の作業へと戻っていきます。
その間も2人はなんやかんやと言い争いを続けます。

「っだー、もう!砂糖と塩間違えるなっての!」
「間違えてねぇよ!」
「めっちゃ甘くなってんじゃん!」
「良いだろぃ!甘い方が美味いに決まってるだろぃ!」
「あんたの味覚を疑うね!何処の国にカレーライスに砂糖を大量に入れる奴が居るのよ!」
「此処に居るね!」
「――ッ餓鬼!」
「餓鬼で結構!」

ふん、と鼻を鳴らすと2人は別々の作業をし始めました。
どうやら、2人で共同作業をする事を諦めたようです。
しかしその間も2人はチラチラと相手の方を気にします。
たまに目が合うと、「ふん!」と鼻を鳴らしまた別の方向を向きます。

しばらくして、ようやくカレーライスが出来上がると、2人は椅子を並べて
仲良くカレーライスを食べ始めました。

「―うん。絶妙!俺天才!」
「…確かに美味しい!」
「だろぃ!?」
「ッブン太天才!本当美味しい!私カレーライス好きなんだよね!」
「俺も!でも俺はの方が好き」
「あたしもブン太の方が好き〜」
「おう!俺達ラブラブだな!」
「ラブラブ〜!」

あはは、と笑い合いながら2人はカレーライスを食べ続けます。
この2人、仲が悪いと思えば急に良くなり、
「付き合ってるのか?」と聞くと「誰がこんな奴!」「こっちから願い下げっ!」と
顔を真っ赤にして否定してしまいます。

「うっへっへ、美味しい〜」
「笑い方キモッ」
「うっさい!
 ―あ、そだ。後でジローに持ってってあげよ!」
「……(ムカつく)
 じゃぁ俺は杏に持ってこっと。」
「……(ムカつく)
 男が料理を女の子にあげるって気持ち悪いよ」
「じゃぁお前もジローに持ってくなよ!」
「はぁ!?何でよ!?」
「ムカつくだろぃ!」
「あたしはアンタにムカつくね!杏ちゃんに持ってかないでよ!」
「やだね!じゃぁ桜乃に持ってく!」
「―ッッ!」






鈍感すぎます。