「おらー静粛に1組のみなさーん!」


教壇に上って声を張り上げるリコちゃんはクラスを仕切るおねえ的な存在。1組はぐーだらだらだらなクラスだから委員長がいない(名目上はじゃんけんで負けた哀れな男子の名前が書いてあるが)のでリコちゃんが殆ど仕切ってたりする。

一方長太郎くん(付き合い始めに名前呼びを強制された)とは、結局断ることも出来ず今も付き合っている(ということになるんだろう)うん…ね。分かってるんだよ。好きでもない相手と付き合うのは良くないって。全部全部あたしが悪いって分かっていますとも、ええ分かっていますとも!
でもしょうがない。・・今は、体育祭のことに専念させていただきたい。逃げてるだけかもしんないけどさ。・・うん、今は体育祭で!!


「体育祭が3日後に迫ってきましたーみなさん準備できてますかー」
のダンスが危ないでーす!」
「うっせ田中黙ってれ」


宍戸と仲の良い坊主頭の田中に釘を刺すと田中はこっちを見てにやにや笑ってきた。・・うん、あたしも自分でもやばいと思うけど。
あたしはなんか1組のこういう雰囲気が好きだ。他のクラスは地味ズやら派手ズやら分かれているけど(現にあたしも去年まではそういうクラスにいたけど)1組は皆同じ立場。いや、マジで。グループとかもあんまり固まってなくて本当にみんな仲が良い。ちょっとこのクラス最高じゃね?と何度思ったことか!


「それでですね、大変なことに気がつきました。我が1組では応援合戦の団長・副団長が決まっておりません」
「えっ!ちょっとそれ大変じゃない!?」
「後で良いだろーってほっておいたらこうなりました。そこで急遽決めなきゃいけないんですけど、やりたい人ー!ちなみに団長は男、副団は女で。」
「「「・・・」」」


誰もやりたい筈がない。
応援合戦…そう、あれ。今練習しているダンスを踊るのが応援合戦。クラス事に決められた時間内を使って応援歌歌ったり踊ったりしてそれを先生達が見て点数をつけていく。一番点数が高かったクラスは最後の閉会式でアンコールを踊ることが出来る、っていう仕組みで、かなり燃え上がる。
だから団長・副団長と来れば当然みんなを引っ張ってかなきゃいけないし、燃え上がらなければならない。強制的に。そんな大変な役を誰も引き受けたがる筈がない!…他のクラスはみんなやりたがるんだろうけど。


「もう2年生に任せたらよくね?」
「駄目だね。しきたり的に駄目だね」


あー・・最高学年って面倒くさいなあ。
まあ、誰か適当に手をあげるだろ!ということでぼーっとしていたら隣の席の宍戸と目が合った。


、お前団長やれば?」
「団長は男しか出来ません」
「だから言ってるんだろ」


くそ、コイツ…!あたしを男だと!そう言うのか!?冗談だろうとは思うけど…いやいや、宍戸なら本気で言いかねない。
にやにや笑っている宍戸に少し腹が立ったので畜生、こいつ見てろよと心の中で文句を飛ばし大声でこう叫んであげた。


「リコちゃーん!宍戸が団長やりたいそうでーす!」
「えっ、ちょ!お前!」
「あ、本当に?じゃあ宍戸が団長で良い人ー?」
「「「はーい!」」」
「よし決定」


こんな時だけノリのいい1組本当最高!してやったりだざまあみろ!
今度はあたしがにやにやする番。宍戸の顔を見てみるとまだ状況が飲み込めていないのか口を半開きにして固まっていた。


「うーん…そうしたらあと副団長なんだけど、やりたい人?」
「「「・・・」」」
「じゃあ宍戸とペアので良い?」
「えっ、ちょ!待っ」
「「「はーい!」」」
「全員賛成ということで決定」


なにこの王道ストーリ!?