ばっきゃろー!ついに始まった体育祭だー!
あたしを含め生徒達はグラウンドの中心へ集合する。これから開会式、という訳だ。なんというか、やっぱり早かったなあ。大丈夫かなあ。
ちなみに氷帝学園の体育祭というのは、全学年クラスごとに分かれて戦うものだ。中学は4クラスあるので赤団、白団、黄団、青団の4つに分かれる。我らが1組は赤団だぜ!イエイ!


「1組ここー!男子右で女子左!出席番号順ねー!」


先頭に立った実行委員の方々が大声を張り上げながらクラスごとに並ばせる。ちなみにあたしと宍戸は開会式で選手宣誓をしなければならないので一番前に並んでたり。ようやく静まり返ったところでプログラムを配られる。


<午前中>
1.開会式
2.50m、100m走
3.綱引き(1年)
4.棒引き(2年)
5.台風の目(3年)
6.棒倒し
7.騎馬戦(2・3年)

<午後>
8.2人3脚
9.障害物競争
10.応援合戦
11.団対抗リレー
12.閉会式


・・・うむ。例年通りのプログラムすぎる。ちなみに点が高いのは応援合戦と団対抗リレーで、この2つで1位を取ると優勝は確実と言われている。あ、団対抗リレーは各団の足が速い人が選出される競技で、団長は足が遅かろうが速かろうが伝統的にこの競技に出されている。


「なあ!」
「おうなんだ宍戸!」
「お前競技何出るんだっけ」
「あたしは台風の目と騎馬戦と応援合戦」
「ウワッお前最低限しか出ないのかよ!」
「だって疲れるじゃんよ!!」


宍戸もあたしも興奮しているのか、始終笑顔が絶えない。笑顔っていうよりはニヤニヤだけど。


「宍戸は何でんの?」
「んー、台風の目、棒倒し、騎馬戦、障害物、応援合戦、団対抗リレー!」
「うおっ大活躍じゃん」
「まーな!俺体育祭大好きだし!」


そうだよなあ、テニス部だから運動神経抜群だもんね!そりゃあ運動好きになるわ。んじゃあ、適度に応援しとくぜ!って言ったら宍戸が笑いながらピースしてきた。・・な、なんだか・・う、ん。


「台風の目、がんばろーな。応援合戦もがんばろーな!」
「だね!」


団長と副団長、ということであたしと宍戸は大抵の競技をペアで出ることになっている。これは他のクラスも同じで、確かが悔しがってた。「あたしが景吾とペア組みたかった〜!」って地団駄踏んでた。ああ、そうか。あの噂の跡部は黄団の団長だもんなあ。


「俺、さ!まだ1回も優勝経験したことねーんだ」
「あたしも!してみたいよね」
「おう。だからぜってー優勝しようぜ!」
「おう!優勝だ!」


2人でガッツポーズを交わすと、不意に宍戸が立ち上がる。「も!」と腕を引っ張るのであたしも一緒に立ち上がる。赤団のみんなが、あたし達へ視線を向けた。


「おいみんな!絶対優勝しようぜ!」
「「おー!」」
「団長の宍戸くんが全部の競技で1位取るそうでーす!」


あたしの発言にみんなが笑いながら色々な言葉を投げかけてくる。いつもなら此処で宍戸に殴られそうだけど、どうやら今日は違うらしい。


「おう!俺に任せとけ!」


一気に盛り上がる赤団。その騒がしい音の中で、あたしは思わず宍戸の横顔を見つめてしまう。宍戸は嬉しそうに笑ってみんなを更に煽っていた。不意に、宍戸の目がこちらへ向けられる。あたしと宍戸の視線が交じり合う。奴は、目を細めて楽しそうにはにかんだ。




――俺に任せとけ


何だか甘酸っぱいような味と共に、その言葉だけが頭の中へ響いた。