長太郎くんは100m走で当然の様に1位を取り黄団の仲間達に褒められていた。応援していて気づいたこと、やっぱり男子テニス部は半端なくモテる。レギュラーでなくとも1位を取れなくても、男テニが出れば黄色い歓声が飛び交う。やばいよ、まじでやばい。何であんなモテんの意味分かんない!・・いや、分かる気もするけど。

次の種目は1年生の綱引きで、2・3年全員が応援しようと待ち構えていた。応援合戦以外でも応援をすることで点数があがることもあるのでみんな必死。勿論その逆もありで、応援態度が悪いと減点されることもある。


「現時点ではやっぱり黄団が1位か・・」
「3点差で赤団2位じゃん。まだまだ普通に取り戻せるって!」
「おう!」


お互いにガッツポーズをしあって、調度入場してきた1年生達に声援を送る。
3点差なんて、すぐに追いつけるだろう。ただ心配なのが応援合戦・・あの跡部が率いる黄団はとんでもなくダンスが派手な気がする。・・ま、派手だからって勝つとは限らないよね!!!うん!!!そうさ!


「フレー!フレー!あーかーだーん!!」
「「「フレー!フレー!あーかーだーん!」」」


宍戸の掛け声を先頭に、赤団のみんなが声を合わせて1年生を応援する。あ〜良いよねこの雰囲気。青春だよまじ青春!く〜たまんねー!

1年生の綱引き、結果は白団1位、青団2位、黄団3位で我ら赤団は最下位・・。いやいやいや!違うからね!みんな小柄ですばしっこいから!!力はあまりないけど足速いから!うん、そういうことだからあまり勘違いをしないように!

おかげで点数はどの団も大して変わらなくなってしまった。でもまだ大丈夫だ。次は2年生の棒引きか。・・長太郎君が、出るなあ。


「ちょっと〜〜。長太郎くん出るじゃ〜ん応援しなくていいの〜?」


Shit!!ちゃんめ、そんなニタニタして調度いいタイミングで話しかけてくるんじゃない!


「い、いやいやいや。あたし赤団だし。長太郎くんは黄団だし。応援する要素なんかな」
「あんたの彼氏じゃん」
「え、いやいやいや!!あ、そうだけど!!でも違うじゃん!!」
「あ、ほら出てきた。応援してあげなよ〜」
「ええええ!?」


そりゃ、あたしの彼氏は長太郎くんだけどあたしは赤団な訳で長太郎くんを応援する=黄団を応援するとかそういう意味な訳で宍戸の前で長太郎くんを応援するのはちょっと気が引ける――って、勿論宍戸が団長だからだけど。別に、そんな、変な意味は含んでいないので。

ちゃんに「ほらほら!」と背中を押されくそう、これ覚悟するしかないか!と思った瞬間、右側から軽い拳骨が飛んできた。宍戸だ。宍戸チョップに次ぐ宍戸鉄拳か。


「ばかやろう。他の団の奴応援すんな。赤団応援しろアホ
「ごめんアホ宍戸」


でも今のは少し痛かったぞ、と反論しようと隣の宍戸を見上げると、奴ときたらそりゃあもう不機嫌な顔でほぼ睨む様にグランドを見つめていた。


宍戸が不機嫌になった理由があたしが他の団を応援しようとしたからじゃなくて、長太郎くんを応援しようとしたからだったらどんなに嬉しかったことだろう。


そんな馬鹿げた思いは、すぐに熱い太陽の日差しに溶けてしまった。