棒引きの結果、我ら赤団は２位というまずまずな成績を収めた。相変わらずライバル（もう勝手に決定だよコレ）黄団は１位だけど、あたしたち赤団だって負けてない。次は３年生の競技・台風の目だから、それで黄団に勝てば逆転出来るだろう。
ただ、後ろには青団と白団が少しの点差で待ち構えているので油断は出来ない。ああ、今年は接戦だ！


「うお〜！緊張する！まじする！」
「ぜってー勝つし！！」


あたし達は内側から、田中・ちゃん・あたし・宍戸の順で台風の目のアンカーだ。悔しいけど隣の帽子野郎は足が速いので一番外。ぐるっぐるぐるっぐる回るわけですね、このアホ宍戸は。
誘導係の人の指示に従って整列し、グランドの中心へ移動する。あ〜燃え上がる！練習では上手くいったし、誰かが転ばない限り絶対上手く行く！


「位置について！よーい・・」
バンッ！！


「いっけー！！頑張れー！」
「回れ回れ回れー！！！」


ついに始まったー！走っているクラスメイトを見ようとみんなが列を崩し始めるが、ここは団長宍戸くんの出番。


「列つめろー！前のやつとあんま間隔あけんなよ！」


宍戸の指示に従って、赤団のみんなは列をつめ始める。台風の目って、こういうところも大切だよね。
そして引き続き応援しつつ、やってきた棒を飛んで、くぐる。楽しいなあ！ちゃんと目が合ったので思わず２人して笑ってしまった。


「お！いけそうじゃない！？」
「今のところは１位ね！しかも結構差がついてるし！」
「良い感じだな！」


言葉通り、あたしたち赤団は他のクラスに比べてかなりリードしている。次々と棒がランナーにまわされていき、もうすぐあたしたちの番だ。


「由梨ちゃん！頑張ってね！」
「うんっ！」


あたし達の前は、由梨ちゃんたちが走る。由梨ちゃんは緊張している面持ちで頷いたけど・・大丈夫かな。
そしてついに棒が由梨ちゃんたちへ渡される。よっしゃー頑張れ！！ここまでくれば大丈夫だイヤッホーイ！！


「なんか手がビリビリしてきた！」
「緊張するぜマジ・・」
「田中ちゅわん大丈夫でちゅかー」
「大丈夫でちゅ」
「きも！」
「きも！」
「きも！」


冗談を飛ばしあって、緊張を隠してたあたし達だけど――ここで、思わぬハプニングが起きた。

由梨ちゃんが、転んでしまったのだ。

その間に２位だった黄団がどんどん追い上げていき、由梨ちゃんが走り出した頃には既に隣に並んでいた。


「頑張れ！大丈夫だから！」


みんなが応援する中、由梨ちゃんと言えば既に泣き出しそうな顔だ。そりゃそうだよね、あの場面で転んだらあたしだって泣きそうになる！！


「ご、ごめんなさい！」


走り終わった由梨ちゃんが唇を噛んで下を俯き、脇へ避ける。


「由梨！あとは任せとけ！！」


あたしたちに棒が渡る瞬間、宍戸が由梨ちゃんに向かってそう叫んだ。その言葉に、思わず棒から手が離れそうになる。

わかんない。ぐるぐるしすぎて、よく分からないけど体が熱い。――由梨って、名前呼びだったよね。別れたのに？任せとけって、なに？ねえ、なんか嫌だ。「おう！俺に任せとけ！」同じ言葉、どうしてあたし以外の子に言うの。

気がつけば宍戸のスピードについていけずに、あたしたちの棒はおかしな位斜めっていたし、ぐるぐる回るところだって棒に触っているだけで精一杯だった。ゴールに向かって走り出すと、声援がかすかに耳にまとわりつく。

あたしとちゃんが脇に避け、あとはみんなが棒を飛んでくぐり、終わったら棒を立てるだけ。

棒を立てる宍戸と田中。隣では数秒遅れて黄団の跡部が棒を立てた。ワアアアアア――歓声が、聞こえる。どうやら赤団は勝ったらしい。

名前呼びだって、きっと今までの癖が出ちゃっただけなんだろう。任せとけ――って、そりゃあフォローするために使うよね。でもあたしは確かに、由梨ちゃんに嫉妬していた。くだらない。もう終わりって、決めたのに。執念深い女は嫌われるのに。



視線の先には、笑い合う宍戸と由梨ちゃんがいた。