割と危険な競技、棒取りが何事もなく終わり、次は午前最後の競技の騎馬戦。騎馬戦は2・3年生全員出るからあたしも強制で出場な訳です。ちなみにポジションは・・騎手です。すみません下のみんなほんっとごめんなさい!!でもルール上団長と副団長は騎手にならなきゃいけないんだあああごめんね!!


「やあやあ!我こそは赤団団長、宍戸亮なり!いざ堂々と勝負せよ!」
「俺様こそ黄団団長、跡部景吾。度胸がある奴はかかってきな」
「・・我こそは青団団長、忍足侑士や。我と思わん者は、いざ出でそうらえ」
「やあやあ!我こそは白団団長柳瀬涼!いざ尋常に勝負せーん!」



団長も勿論上な訳ですね。これもまた上半身裸。すごいよ悲鳴が!!
さっきは眠そうな顔をしていたちゃんも、今度は跡部がいるからさっきからうるさいったりゃありゃしない。・・いや、叫ぶ気持ちも分かるけどさ!?そこまで叫びたい!?
・・でも、確かにみんなかっこいいな。跡部は最早あたしが言うまでもないし、宍戸だって・・うん。柳瀬もなんか俗に言うカッコ可愛いってやつだ!
特に忍足の微妙な訛りと、挑発的な目線とか。なんていうか、色っぽい!!あれ犯罪じゃん!?公共露出物みたいな名目で逮捕されるよ!

騎馬戦のルールはトーナメント方式で基本は団体戦。多く鉢巻を取ったチームが勝ちで、同点だった場合は大将同士で一騎打ちになる。ちなみに団体戦では大将を倒せばその時点でその試合は終了。・・あたしは、女子の大将だから絶対に鉢巻を取られないようにしないと!おし!
長い髪は邪魔だし引っ張られると痛いからばっちりポニーテールにして準備万端です。女の怖さを見せてやる!


「よし、じゃあ作戦通りお願いします!」
「了解!任せといて!」
「絶対崩れない!!」
「うおおー!」


あたしたちの赤団の作戦・・ずばり、孤立しない作戦!3組〜4組になって行動して、決して孤立しないこと。一騎vs一騎よりも一騎vs三騎の方が有利に決まっているからね。ちなみにあたしは他の騎馬にがっちりばっちり防御されてます。


ピピーッ!


騎馬戦の開始を告げる笛の音がなった。
一回戦目は白団との勝負だ。


「先輩頑張ってくださーい!」
「フレーっフレーっしーろーだーん!」
「頑張れー!!」


ああ、緊張する!それを後押しするように声援が聞こえるー!ギャー!


はあたし達が守るから安心しろ!」
「そうです先輩!ばっちり守ります!」
「うう・・み、みんなありがとう!」


あたしの周りを囲むようにちゃんたちの騎馬(ちなみにちゃんも騎手だ)が並んでいる。かつてこんなに頼りない大将がいただろうか・・ごめんねみんな!あたしチキンだから!一般人だから!

自分の身を守るだけで精一杯な1回戦目が、数分後にようやく終わった。なんとかあたしは無事で、白団を多く倒した赤団は決勝へと駒を進めた。
どうやらみんな怪我もないみたいだ。よかったよかった。

2回戦は青団と黄団の戦い。接戦だったけれども青団が勝利を収めた。・・決勝は、青団と戦うのか・・青団の大将、モデルやってるとかいう黒澤さんだよ!派手ーズの黒澤さんだよ!こっえええ!!でも負けるかあああ!


3位決定戦はあっという間に終わって、ついに決勝戦が始まろうとしている。負けるかこんちくしょう。


ー!いけー!!」
「ゴリラの底力見せ付けてやれー!」

うっさい、黙れ1組の男子共!・・とかいいつつ、嬉しいのは内緒です。別にMって訳じゃないけど!応援されるとやっぱり心強い。

青団と赤団で向き合って開始の合図を待つ。・・ばっちり、黒澤さんに睨まれた。コワイヨー、とか思ってたら隣のちゃんにもやり返せとばかりに睨まれたので、黒沢さんにゲッツ!ってしてみた。あなたの鉢巻ゲッツ!するよって意味だ。伝わらなかっただろうか、更に睨まれた。


ピピー!
「いくぞー!!」
「おおー!」


ついに始まった、決勝戦。
1回戦目と同じような作戦で、それぞれ孤立しないように気をつけて行動している。あたしも自分の身を守りつつ戦況を把握しようと努力してみるが、どうなんだろう。今のところ赤団がリードしているみたいだけど・・あ!後輩の騎馬が派手に倒れた!大丈夫かな。怪我はなかったかな。
よく見れば、倒したのは黒澤さんの騎馬だ。・・恐ろしー!!


「負けるか・・っての!」


まん前にいたちゃんが、青団の騎馬によって少し押され気味になっていた。くっそー!ちゃん今助けるぞ!


「ごめん、もうちょっと前行ける!?」
「オッケー!」


取っ組み合うちゃんと青団の子の隣に並び、手を伸ばして青団の騎手の鉢巻を引っ張る。
青い鉢巻が、あたしの手の中で踊るように揺れた。


「っありがとう!!」
「いーえいえ!」


ちゃんと笑いあった瞬間、試合の終わりを告げる笛の音が鳴り響いた。
無事だった騎馬が陣地に戻り、先生の結果発表を待つ。


「青団、5騎!・・赤団、5騎!!引き分けにつき大将による一騎打ちを行います!!」


「え、ええええええ!!!?」
「いけ、!!」
先輩!!いけます!!頑張ってください!」
ぜってー勝てよ!!」


嘘でしょ!?あの黒澤さんと一騎打ち!?勝てる訳・・・・、っ、ここで諦めたら負けだー!絶対勝つ。あたし絶対勝つ。
プレッシャーと緊張と暑さのおかげで体中が熱い。今軍手を外したら手が汗まみれになってそうだ。


「それでは大将、前へ!」


さっきよりも近くなった黒沢さんが、怖いくらい整った顔であたしを睨む。流石にゲッツ!とかする訳にはいかないので今度はピースしてみた。相手を挑発してみる作戦だ。・・失敗したかもしれない。

ゆっくり息を吐いて、ゆっくり息を吸う。どこかで見たことがあった。深呼吸って吸って吐くより吐いて吸った方がより効果あるらしいよ。


ピピー!


守られてばっか、逃げてばっかだったけど。もう逃げないし、負けない!