ついに全種目が終わり、生徒達は開会式と同様グランドの中心に整列する。
あたしは団長の宍戸と一緒に列の一番前に待機。これで優勝か準優勝になれればあたし達はトロフィーと旗を貰うため舞台にあがることができる。


「し、ししど」
「おう。な、なんだよ」


心なしか宍戸も緊張しているようだ。中学で最後の体育祭だし優勝したいのはみんな同じ気持ちだろう。


「正直さ・・準優勝は確実だと思うんだけど、どう思う?」
「俺も、実は同じ考えだけどよ・・問題が黄団なんだよな」


そう、宿敵でもある黄団はきっと得点の高い応援合戦で1位を取っただろう。そして先程の団対抗リレーでは赤団と同着1位だった。赤団は他の団よりも得点は高かったけれど、抜かれている可能性だって十分にある。


「まあ、でも全力出し切ったから悔いはないぜ!」
「あたしも!すっごい楽しかったよ。ありがと団長」
「・・や、やめろよ」


そう言って宍戸はぷい、とそっぽを向く。髪の毛から覗く耳は真っ赤に染まっている。


「あれ、団長照れてるー?」
「相沢、団長は照れ屋さんなんだよ」
相沢うっせーんだよ!ほら、閉会式始んぞ!」
「いたっ」
「い゛っ」


宍戸に鉄拳をくらい、頭殴られた頭のあたりを抱え込むようにして手を覆う。くそう、痛い。

しばらくすると体育祭実行委員が舞台に立ち、閉会式が始まった。


『プログラム1番、成績発表及び表彰。実行委員長の向日くんお願いします』


向日の登場に微かにグランドが黄色い悲鳴で揺れたが、なんといっても順位の発表だ。みんなそれどころでもないらしい。
向日はゆっくりと舞台にあがってくる。そしてまたゆっくりとマイクを手に取り、そっと口を開いた。


「第2位の発表をします――」


隣の宍戸の息を飲む音が聞こえる。グランド内に緊張が走った。


「―――第2位は・・


 720点獲得、黄団です!」


わああああああ!


「ちょっ!宍戸!もしかして!!」
「ま、まて!まだ焦っちゃ駄目だ!!駄目だ!」
「あああ!」


言いながらも宍戸の口元は緩みきっている。勝利を確信したのだろう、赤団のみんなの瞳はきらきらと輝いていた。


「そして第1位は・・赤団です!おめでとー!」


わあああああああ!!


「ったあああ!!!」
「っしゃ!!」


赤団のみんなが歓声をあげ、他の団からぱらぱらと拍手が送られる。ああ、やた!赤団が、優勝!うわ、なにこれ凄い嬉しいんですけど!!うわー!宍戸ー!団長万歳!!


!やったな!!」
「やったね!!やったー!!」


思わず立ち上がってしまった宍戸とハイタッチをする。するとその瞬間赤団からの歓声が一層強くなった。そんなみんなへ向けて、宍戸は満面の笑みでガッツポーズを送った。


「どうしよう、凄い嬉しいや!」
「俺も俺も!!お前最高だよ!!」
「ばかやろー!宍戸このやろー!団長大好きだー!!」
「このやろー!副団長俺も大好きだー!!」
「あはは!気持ち悪い!!」
「んだよ!お前だって気持ち悪いわ!!」


悪口を言い合いつつも、あたし達の口元は緩みっぱなしだ。
もう一度宍戸とハイタッチを交わす。



手のひら越しに伝わる体温は、確かに熱を帯びていた。