「じゃあ駅こっちだから俺行くわ」
「俺もー」
「おう。またな!お疲れ!」
「お疲れ!また明日!」
「お疲れー!」


田中と相沢に別れを告げて、俺は少し前を歩くを見る。と別れたみたいだ。このまま俺とも別れても良かったけれど、どうせ到着する方向は同じだしの傍へ駆け寄った。夜道って危ないし、こいつだって仮にも女な訳だし。


「ぐおうあっ!!?」


の肩を掴んだら雄たけびみたいな声をあげた。前言撤回。やっぱりこいつ女じゃない。ゴリラだ。メスゴリラ。


「・・お前さあ、もっと可愛く叫べよな」
「んだよ宍戸かよ!脅かしやがって!本気でビックリしたぞ!」
「悪い悪い」


眉を寄せて怒るの反応が面白くて思わず声に出して笑う。あんな悲鳴・・じゃないな、雄たけび出す女子なんてくらいだ。やっぱりこいつ、面白い。

の隣に移動して、ふと夜空を見上げる。・・別に、綺麗な夜空って訳ではないけど。星もあまり出てないけど。なんとなく寂しい気持ちになった。直前まであいつらと騒いでたからかな。だって田中が根本アナを可愛くないとか言うから・・俺は根本アナ派なのに・・あいつはあいちゃん派で・・くそ、今思い出しても許せねーよ。ふざけんなよアイツ。

体育祭終わったな。そう声に出すと、はぐっと寂しそうな顔をした。やっぱ寂しいよな。


「結果的に優勝できたけどさ、多分俺、ビリでも同じ気持ちだったと思う」


本当に、このクラスで良かったって思う。中学校最後のクラスがこんな最高な奴等が集まってクラスで良かったって。クラス変え当初はレギュラー1人もいねーし、あんま喋ったことのない奴ばっかでどうしようとか思ったけどすぐに田中達と仲良くなれたし。あいつらには何だかんだ言ったって感謝してる。

俺が由梨に告白したのは1年前くらいだったか。その頃の俺らの中では「ゲームに負けた奴が○○する」っていうゲームが流行っていて。・・我ながら、なんつー最低なゲームしてたんだとは思うけど・・罰ゲームで告白とか、やったりしてて。ほんと、最悪だよな。それで、ゲームに負けた俺は由梨に告白することになった。・・すぐに、「これはゲームなんだ」って説明しようと思った。けれど由梨は俺の告白にオーケーを出してしまった。
元から奴等は俺と由梨をくっつけるとか計画してたらしくて、俺はそのまま言う機会を失って・・・ホント、最低だ。俺。

でも、由梨からは色々学んだよ。付き合ったことは後悔していないし、由梨は俺が罰ゲームで告白したことを既に知っている。伝えた時は凄く傷ついた顔をしていたけど(当たり前だよな・・)由梨も「あたしも、亮より別の人が好きだったんだ。でも亮に告白されてクラッときちゃった」って笑ってくれた。それが嘘か本当かは分からない。もしかしたら嘘かもしれないし、本当かもしれない。由梨は優しい奴だから、俺を気遣ってそう言ってくれたのかもしれない。・・俺がこんなことを言うのはお門違いかもしれないけど、由梨には幸せになってほしい。俺より良い奴なんて、その辺にごろごろいるから・・本当に・・。

この際言おう。俺は・・今、隣を歩いてる男みたいな女が、・・好き、・・だ。・・いや、やっぱ好きじゃない。・・・・・嘘だ。っだー!もう分からねぇ!
本当は気づいた時から好きだったんだ。でも正真正銘幼馴染のお前が俺のことを好きだとはこれっぽっちも考えられなかったし、うじうじしている間に事は進んでいつの間にかは長太郎と付き合っていて。

本当、長太郎に告白された時はびっくりした。でも自分の気持ちに嘘をついて、俺は長太郎に協力した。本当はすっげー嫌だったよ。他の男の告白を手助けするんて。俺だってお前のこと好きなのに。でもどうせ叶いっこないし、って俺は勝手に諦めていたんだ。どこまでも最低な奴だよな。

まさかだった。は長太郎の告白にオッケーして・・俺はもやもやとした気持ちと一緒に、一気に恥ずかしくなった。これで良いのかって。俺より年下の長太郎の方が、自分の気持ちに嘘つかないで真っ直ぐで・・俺は自分の気持ちに気づかないフリをして。いつまでやってるつもりだって、自分をガツンと殴りたかった。


今更気づいた。俺はなんて間違ったことをしていたんだ。


なあ、今からでも遅くないかな。
幼馴染の位置から、1歩踏み出す勇気がやっと出たんだ。
それは俺の望む位置へはたどり着けないのかもしれないけど、今の状況よりは何百倍もマシだ。


、騎馬戦凄かったな」
「ああ・・黒澤さんまじ怖かったよ!美人の怒った顔はね、なんつーか本当怖い!」
「まー黒澤は10人中9人くらい振り向きかねないぐらい美人だよな」
「だよね。・・あたしはどうせ、誰も振り返ってくれないだろうけどね!」


が開き直ったように笑った。・・俺はそんな風に思わないけど。


「・・1万人中1人くらいは振り返るんじゃねーの」
「ワーウレシー」


・・やっぱ素直になれないけど、本当に思う。


「その1人は俺だけどな」


本当に、思う。


「・・だろうね」


がにかりと笑った。俺もその笑顔につられるようにして笑った。