私、は出来そこない吸血鬼である。事あるごとくに「ああ、本当自分は駄目な吸血鬼だ」と実感してしまう。
例えば、容姿。私以外の皆さんはとても綺麗な容姿で浴衣を着崩しており、華美な雰囲気を出しているのに私ときたらへんちくりんな容姿で全然綺麗なんかではないのだ!(皆さんは御世辞で「可愛い」「可愛い」と頭を撫でてくれるが)
こう・・・皆さんが浴衣を着ると、元々美麗な容姿に更に美しさが加わるのだが私の場合はどうしても幼くなってしまう。
そういえば、どうして浴衣を着るのかと訪ねてみたことがあったのだが、実は驚くことに昔はたきしーど、という物を身につけていたらしい!だがしかし。ある理由を境目に浴衣へと変えたらしい。その理由を聞くと「もう少し大人になってからね、」と精市さんに釘差されてしまった。


「おい、お前この前の血どうだった?」
「あー、アレ最悪!見た目と反して不味かった。」


そして、最大の関門が吸血鬼ならではの・・・あの、血を吸い取るやつだ!
私にはどうしてかそのちゅーっ、というものが出来ないのである。皆さんの歯にはきらりと輝く犬歯が立派に生えているのに・・・私には柔らかい物しか噛み砕けない歯しかないのである。まるでおじいさんみたいだ。
そこで私は決めた。今日こそ、ちゅーっをやるのだと!
しかしどういう訳か私は皆さんと一緒に人間の世界へと連れて行って貰えないので、今日は大好きな清純さんにやろうと思っている!
、いざ!














* * *















いやしかし。
吸血鬼のプロの清純さんが、私に血を飲ませてくれる訳がないのだ。・・・そう気付いたのは飛びつこうとして失敗し、清純さんに抱っこされてしまったた後だった。


「わー、だ!俺ってラッキー!一緒に遊ぶ?」
「・・・・・・」
「え、不機嫌?・・・お、俺、悪いことした?」
清純さんはあたしの顔色を必死に伺い、焦りの表情を顔に浮かべた。
くそう、いとも簡単に捕まった。岳人さんだったら絶対こんなヘマしない。慈朗さんでもしない。・・・こんなヘマをするのは、私だけである。
ち、ちくしょう!諦めるかーっ!


「のわ、!?」
するりと清純さんの首に自分の腕を撒き付ける。・・・こう、もっと雅治さんみたいな妖しい笑顔が出来たら良いのだが今の私にはそんな余裕もない。
清純さんはようやく私のしたいことを理解したのか、「・・・はぁ、」と甘い声を漏らした。


。だーめっ」


ち、ちくしょー!このやろう、こうなったら意地でもやってやる!
優しく私の腕を解こうとする清純さんに抵抗してきゅ、としがみ付く。
「いーやーだー!私もみなさんみたいにちゅーってやる!」
「――や、ちょっと本気で待って!!」
誰が待ってやるものか!
意を決し清純さんの首元に噛り付く。そして思いきり吸いつくと、私の予想とは違い「ちゅ」というなんとも可愛らしい音が響いただけだった。


「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・(やばい、今の・・・キス、に・・・入らないよね?)」
「・・・・・・きよすみ、さん」
「え、あ、・・・なに?」
「ちゅーって、出来なかった・・・」
「――っあー、ほらほら!泣かないの!」
清純さんは顔をほんのり朱に染め上げながらも、あたしのことをぎゅっと抱きしめ頭を優しく撫でてくれたのであった。





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