「うっわー超ラブラブなんですけど〜」
「・・・・・・・・・ッチ」
「よう、千石に」
「「な、なんで居るの!?」」
お化け屋敷を手を繋いで出た先には、理子ちゃんにあっくんに南に雅美ちゃん。
「たまたま私達も来てたんだよ!さっきお化け屋敷に入ってく2人見て此処で待ってみました」
「このまえ誘ったら『用事ある』って2人して言っただろ?だから4人で来たんだ」
にやにやする3人(あっくんは相変わらず仏頂面だ。そんな顔だから近くを通る親子は「お母さん、あのお兄ちゃん・・・」「こら、見ちゃいけません!」なんて会話をしているぞ、あっくん!)私とキヨは顔を見合わせて笑って、その4人の元へと近付いて行った。
* * *
「山吹中・・・聞いた事ねぇなぁー・・・どんな所?」
「みんな優しくて・・・面白くて・・・凄く良い所だったよ」
だけど、今の私は。
ヒキさん達の命令とは言え、『病弱な優等生』の仮面を被って暮らす毎日。そんな絡みづらい子に特定の仲が良い友達なんて出来る筈がない訳で、みんな一歩下がって私と接してる。カイくんの言う通り、これではまるで本当に「空気とさして変わらない子」だ。
山吹ではあんなに笑ってたのに。みんなと仲が良かったのに。
「へぇー、山吹、か!俺も行ってみたいなー!」
今は、クラスのみんなと騒ぐことすら出来ない。
「・・・、」
キヨ達には会う事だって出来ない。
「〜っ、」
いきなり目を覚ましたら訳の分からない世界。苦手だった血だって無理矢理見せられて体に慣れさせた。
「・・・さん?」
ぼろぼろに泣いたって、抱きしめてくれる人なんて居ない。
「・・・・・・キヨ、」
一言名前を呼んだって、もう誰も駆けつけて来てくれない。
「さん・・・俺、よく分かんねぇけど・・・悩み事とか、聞くぜ?無理しない方が良いし」
私の頭に手を乗せて優しく笑う山本くん。ふ、不覚だ・・・!山本くん、いや、ボンゴレに心配を掛けてしまった!このままだと友好関係が生まれかねない!・・・ほ、本当は友達が欲しいな、なんて思っちゃったりするけれど、私の一時の思いでレグランデに迷惑を掛けるようなことがあったらそれだけは避けたい。
「ごめん、山本くん・・・!な、なんでもないんだ!」
「・・・そーか?なら、良いんだけどよ
何も知らない所に1人で来て、不安・・・っつーか怖いと思うからよ」
その瞬間、こっちに来て抑えてきた何かが音を立てて崩れて行った。怖い、怖いよ。この先私はどうなるのか、とか。このままスパイ続けて、いつか殺されるんじゃないのか、とか。もう本当に元の世界に戻れないんじゃないのか、とか。怖い。本当は今すぐ泣き叫びたいくらい怖い。
「〜っ、本当は・・・本当は、みんなと一緒に騒ぎたい・・・」
「・・・うん」
「友達だって沢山作りたいし、今みたいな壁がある友達なんていや・・・」
「うん」
「っでも、駄目なんだ・・・、出来ないんだ、」
「うん」
「・・・も、戻りたい!会いたい、キヨに会いたいっ・・・!」
「うん」
「会いたい・・・会いたいよっ、う、うわぁああん!」
「うんうん、そうなのな・・・」
笑みを崩さず、山本くんはただ私の頭を撫でながらずっと話を聞いてくれた。零れる弱音の数に少しも嫌な顔をせずじっと話を聞いてくれた。ようやく落着いた私の背中をゆっくりと擦って、山本くんは私が完全に泣き止むのを待ってれた。・・・まるでジェントルメンである。・・・って、私なんかいらんこと口走った!多分とんでもないこと口走った!「戻りたい」とか「はしゃぎたい!」とか・・・!
「病気なんだっけか?なら思う存分はしゃげねーよな。そりゃあ病気する前の体に戻りたいよな」
せ、セーフ!?普通あれだけの怪しげな単語が出てくれば少しは「ん?何の話?」とか思う筈なのに、山本くんってばもしかしたら相当の天然なのかもしれない。いや、助かったんだけど!・・・・・・って、私、泣いてしまったー!ボンゴレの前で泣いてしまったー!やばい、これはもう友好関係が・・・
「よーし、!俺達友達だから!明日からぜってー学校楽しいぜ!」
「(ぎええ!?)あ!?う、うん!」
友好関係、が・・・