ボンコレファミリーの最強を誇る暗殺部隊、ヴァリアー。今私はそのヴァリアーの屋敷に居る訳で。巡回する部下に見つからない様、物陰に身を潜めているもののなかなかタイミングがつかめない。そりゃあそうだ。ヒキさんの話によるともうヴァリアーはすっごいすっごい恐ろしい組織で、「殺し?ヒャッハー大好きだぜ!」みたいな雰囲気らしい。恐ろしい。恐ろしすぎる。
しかし、流石にいつまでも此処に居る訳にはいかない。今回の仕事は不定期に行われるヴァリアーの会議を盗聴する、という物で早くしないと会議が始まってしまうのだ。勿論バレない方が良いに決まっているが、そんなものは言語道断である。ヒキさんは言った。「会議に出てるメンバーに見つからなければ良い。会議が中断しなければ良い」と。つまりは、だ。


「っ誰だ!」


それ以外にはバレたって何だって良いってこと。
目をギラギラさせ、警戒心むき出しの男は咄嗟に銃を構える。その動作の遅さに思わず笑みが零れてしまうのを抑えながらその男の真正面へと走りこんで行く。


バンッ!バンッ!バンッ!
「っ畜生!何で当たらねぇんだ!」


こんなの、ハルさんの銃に比べたら止まって見えるのと同じだ。軽々しく弾を避けてき、男は銃をカチカチと鳴らす。弾切れらしく眉を顰め舌打ちをし、次の銃へ手を伸ばす。けれど私はその隙をついて男の腹にパンチを1つ。


「遅いから・・・だよ」


* * *


「此処・・・か」


開きっぱなしの扉から微かに漏れる会話。それは何処かのマフィアに奇襲を掛ける、という内容だった。お、恐ろしい・・・!これがヴァリアー!ポケットの中の盗聴器を弄り録音を開始させる。こ、このまま何事もなく終わりますように!


「で、それを何時やるの?ボス」


決行日時・・・ヒキさんから言われたキーワードだ。ヒキさんは頼まれた事以上は絶対やらない。少しずるがしこい。私が盗聴してこいと言われた内容は2つだった。会議の内容は勿論なのだが、それを細かく絞って2つ。1つ、何をするつもりなのか(これはさっき聞いた奇襲、ということで言いのだろう)2つ、その作戦をいつ決行するのか。つまり、これを聞けば私はもう帰っても良いという事だ。うう、早く!早く言ってくれ!こんな緊張度マックスの所に何時までも居たくない!


「・・・・」
「ボス?」
「―――鼠が居る」
「っ!」


低く、低く囁かれたその言葉は鉛よりも重く心に響く。嫌な汗が頬を伝う。・・・そんな、見つかる筈がない。見つかった部下は全部気絶させて誰も居ない部屋に閉じ込めてきたし、此処では物音1つ立ててない。・・大丈夫、だ。大丈夫、大丈夫。だから心臓、そんな大きく鳴らないで・・・!


「逃がす訳には行かねぇ」
シュッ


目の前には微動もせず突き刺さるナイフ。ソレが扉の向こうから飛んできた物と気付くのには数秒かかった。


「〜っっ!!!」


逃げろ!