雨だ。


自分自身の体に当たるソレを雨だと認識出来たのは、意識が戻って暫くしてからの事だった。雨ってこんなに冷たかったっけ。
視界がぼやけ、頭が重く何も考える事が出来ない。体も重く感じ、立ち上がる事なんて不可能だ。というよりは立ち上がる気すら起きない。それ程私の体は弱まっていた。
冷えていく指先は、最早感覚がない。ふと頭を過ぎった言葉。――私は、死ぬんだ。


「――お客さんかな?」


視界に入る影は、訝しげに私を見下していた。返事をしたくても口が開かない。いや、開けないと言った方が正しいかもしれない。するとその影は私の隣にしゃがみ込んだ。


「凄い怪我だ」


独り言の様に呟き、その人は私の腕に触れようとした。――イヤ、だ。よく分からないけど、この人に触られたくない。私に触らないで。徐々に近付いて来る手。あと数センチで触れられる・・・のだが、それはバチィ!という音によって阻止された。なんなんだ、まったく。私自身吃驚したというのに、その人はさして驚いた表情を見せずすっと細める。


「・・・助けてあげるよ」


是非そうしていただけると嬉しい。やった、私、助かるんだ。生きれるんだ。死にたくないと思うのは人間誰だって同じだろう。それ程『死』というモノは恐ろしい。死への恐怖なんて久しぶりに味わった。あれだ。多分5歳の時車に轢かれて「私死ぬのかも」なんて思った以来だ。ああ、安心したら眠くなってきた。やばい、意識が・・・、



「ようこそ、レグランデへ」