『Le preparazioni sono buone?』
。準備は良いかい?)
「Si」
(はい)
『E buono?Lei non deve essere attaccato.』
(いいかい。攻撃を受けちゃ駄目だよ)
「Si」
(はい)


舌っ足らずのイタリア語だけど此処数ヵ月で覚えたにしては私ってば凄すぎると思う!・・・いや、半ば脅されながら必死で覚えたけど。
実はこれが私、の初任務である。マフィアといえばやはり外国・・・本場のイタリアだ!今回私に任されたのは、キャバッローネファミリーの極秘リストを奪って来ること。リストの在り処は分かっているので、後はバレない様にパソコンでかたかたーっとやって逃げれば完璧、だ!

軽くジャンプし1回転して屋根へと飛び乗る。調度キャバッローネファミリー本部がよく見えるので絶好のポイントだ。
今は・・・当然だけど、夜。ヒキさん命名の『フォートアタッカー』が今の私の能力だ。修行してて分かった事なんだけれど、私は特別体質らしい。昼は防御力に長け(初対面、ヒキさんの手を弾いたのはこれ)(ちなみにこちらの名前はヒキさん命名『フォートディフェンサー』)夜は攻撃力・速度が恐ろしい程上がる。ただリスクがあって、フォートアタッカーの時は防御力が0と言って良い程落ちる。あれだ。1撃受けるだけで瀕死状態になってしまうくらい。フォートディフェンサーの時は逆に防御力以外が落ちてしまう。ちなみに、私が拒否した物なら何でも弾くことが出来るのがコレ。
最初はこの能力が信じれなくて、ヒキさんに何度も訪ねたけど何も答えてくれなかた。あれは何か知ってる顔だった。絶対何か知ってた。だけど教えてくれる顔じゃなかった。うん。・・・まあ、いいや。


『Poi e un inizio di missione!』
(じゃあ・・・任務、開始!)
「beneplacito!」
(了解!)


ヒキさんの声と共に屋根から飛び降り着地する。・・・うむ。今のは我ながらに華麗だった。いやでもな。あんまりふざけてるとハルさんキレだしちゃうからな。けっこうあの人短気だから!

予め用意されていたルートを走り抜ける。流石ヒキさん。人がいなければ監視カメラの気配もしない。すっごい緊張していたのだが、これなら上手く行きそうだ!ちなみに今の私は念の為姿を見られても良い様に男装している。短髪に特殊メイク。これは凄い!何処から見ても男の子だ!鏡を見た私は現代の進歩につくづく感動したのであった。


(フロッピーフロッピー・・・あったあった。よし、これを書き換えて・・・)


本日のメイン、重要リストが置かれていた部屋も無人だった。此処まで来ると不気味な位だが、確か今日は重要な任務があるらしくキャバッローネファミリーは殆どのファミリーが遠出しているらしい。成る程、それなら警備が手薄になるのもしょうがない。
暗い部屋にパソコンの画面から出る青白い光が私の顔を照らす。軽いホラーだ。


(よし・・・オッケ!あとは帰るだけ・・・。)


フロッピーを抜き足音を立てずに窓に足を掛ける。――と、足に何か引っかかる物が。くそう、邪魔だ!急がなきゃ、やばい、焦る!
滴る汗を拭いながらも、慎重に足に引っかかる物を取り除こうとする。手の感触からして、糸――、や、やばい。これはアレだ。カイくんが言ってた「糸を切ると警告音が鳴り響く罠」。大丈夫、落着け。気付けたんだから、大丈夫だ、そーっと、そーっと外すんだ・・・と、その瞬間。


ジリリリリリリリリ!!!!!


「〜っ!!」


けたたましく鳴り響く警告音。扉の向こうから一気に走り回る音が聞こえて来る。やばい、逃げろ!


「おい、貴様!待て!」


勢い良く開く扉に、銃を構えた人達。これがマフィア・・・!って、感心してる場合じゃない!人数が多すぎる。軽く100人は・・・居るな、うん。
私はその群れの中に飛び込み目の前に居たおじさんを下から蹴りあげ、将棋倒れになったのを確認すると腰から短刀を取り出す。バンッバンッ!光る銃口に飛んでくる弾。割れるガラス。そんな弾を軽々しく避けながらもどんどん切り進んで行く。


「っマジかよ・・・」


次々と倒れていく仲間達に、絶望の色を浮かべへなへなと座りこむ男の人。


そうだ、恐れる事はない。今の私は強いんだから。




「Ciao」