今まで話した事のない女の子をいきなり自分の家に連れてくるってどうなんだ。いや、こっちの世界ではこれが当たり前なのか!?もう心臓バクバクだ。ボンゴレとお近づき所か家にお呼ばれだ。こんな事、ヒキさん達に知られたら殺される。真面目に殺される!今日だってせっかくの休日を「ワンダーランドに行ってきます☆」と紙に書き残して出掛けてきたのだけど・・・大丈夫だよな。うん。私だって華の中学生だ!ハルさんも「ああ・・・たまにはしょうがねぇか」って言ってくれるに違いない!いや私ワンダーランドなんて知らないけど!!


「よーっし、じゃあ早速頼むぜ!」
「あ・・・うん」


目の前の机には積み重ねられた課題達。なるべく早く終わらせてしまおう。そしてちゃっちゃと帰ってしまおう。変な友好関係が出来ないうちに!


「えっと・・・まずどれからやろっか?」
「あー・・・じゃあ、数学で!」
「了解、です」
「よろしくお願いします」


にかりと綺麗に笑う山本くん。なるほど。この爽やかスマイルにみんなやられる訳だ。・・・無意識なんだろうなあ、こういう笑顔。畜生羨ましいな!私も無意識に爽やかな笑顔とかしてみたい。
おおっと、忘れてた。さっさと片付けるんだった。私と山本くんは数学の課題に取り組み始めた。





* * *





「ふぅっ!大分片付いた・・・」
「サンキューな?ちょっと休憩しようぜ」
「そうだね」


課題を始めて何時間立っただろうか。かなり立った様で全然立ってない気がする。山本くん、実はやれば出来る子なのだ、と今までの流れを見てそう確信した。公式や解き方を教えればその後は黙っていてもスラスラと問題を解いて行ってしまうのだ。山本くん曰く、「普段野球で疲れて勉強あんましねぇからよ・・・」と苦笑していた。


「そういえばさん」
「ん?」
さんの前の学校ってどんな所だったんだよ」
「・・・・・・っ、」


前の学校。つまり、元居た世界の学校。毎日が楽しくてお腹抱えて笑って、普通の中学生として過ごしてたあの日々。急に元の世界での思い出がフラッシュバックする。忘れもしない。大切なあの頃。・・・でも、忘れなければならない、大切なあの頃。
話すつもりなんて毛頭なかったのに、私はその言葉を口にしていた。


「山吹中・・・だよ」