腕時計を見れば、もうチャイムが鳴るまで1分を切っていた。大急ぎで校門をくぐり抜けそのまま走り、慌てて上履きへと履き替える。頑張れ!私ならやれるぜ!黄金の右足を今こそ見せ付けるんだ!
乱れる息なんて気にも止めず、荒々しく階段を駆け上る。そしてすぐに右に曲がった教室の扉を勢いよく開ける、と。


「うわっ!?」
キーンコーンカーンコーン


調度、鐘が鳴った。・・・ついでに、扉に寄りかかってた彼も支えをなくして尻餅をついたらしい。


ー!ギリギリセーッフ!」
。もっと余裕を持って来い」
ちゃんおはようっ!・・・あ、南は地味すぎて一瞬分かんなかった。雅美ちゃんはもっと分からなかった。」
「じ、地味って言うな!地味って!」


笑い声が溢れる教室。南と雅美ちゃんも反論はしてるもののその顔は笑っていた。


・・・俺の事、忘れてない?」
「・・・・・・そ、そんなことないよ!」


自分の足元に目を向けてみれば、未だに尻餅をついた状態の彼。むす、と眉を顰めてこちらを恨めしげに見つめていた。け、けっして忘れてたんじゃないよ!そう言葉を紡ぎながらも慌てて彼に手を差し伸ばす。彼は不満そうに「えー・・・?」と声を漏らしつつ私の手を掴んだ。


「おはよう――清純くん」
「おはよ、ちゃん」


くん付けにちゃん付け。わざとそんな呼び方をしあってしばらく目を合わせて。我慢出来なくて同じタイミングで吹き出した。


「朝から暑苦しいんだよ、テメー等は!」
「なになに?あっくん羨ましいのー?」
「んな事言ってねーだろーが!」
「しょうがないなー!おはよっ、仁くん?」
「ご機嫌いかが?仁くん」


亜久津は声を荒げるものの、決して私達を殴って来たりしない。あっくんこそ真のツンデレだと私は思う。・・・そんな事いったらあっくんはまた怒り出すけど。


「お前等席着けー!HR始めるぞー!」


教室に響く先生の声は何一つ変わらない、いつもの始まりの声だった。




* * *




。今度遊びに行かない?」
「良いね!遊園地行きたいな」
「遊園地なんて久しぶりだなぁー」


何を隠そう、私は絶叫大好き人間である。人の怖がってる声を聞いて自分が楽しくなる、なんてそんなサディスト的考えは持ってなんかいないが、なんと言ってもあの落ちる前のドキドキ感がこれまた溜まらない!
暫くキヨと遊園地の事で盛り上がった後、ふと頭の中に過ぎった質問を投げかけてみた。


「それって・・・もしかして2人っきりで?」
「当たり前じゃん。俺等、付き合ってるんだから」


彼はにかりと頬を染めながらも悪戯っぽく笑った。