あ…やば。ちょ、これきつー!本当使いづら過ぎっしょ、これ!カバーついてるのもやっとな感じだよコレ。消しゴム本体が短くなる度ちょっとずつケースも切ってって…残るはあと少しってところです。『宍戸 亮』の文字もあんま見えないんだよね。本当これ当初の目的を果たしてないよねかっこわらい。これをちゃんもやったんだなーって思うとちょっと笑えた。可愛いなオイ。
ダンスの方、順調・・・に進んでる訳もなくついにあたしは練習放棄・・・・・・をクラスメイツが許してくれる筈もなく、相変わらずワンテンポ遅れて踊る毎日。だれかたすけてください。ちょっと宍戸に笑われたもんよ。口元押さえてプ、って。ムカついたからハードゲイの真似したらちゃんに殴られました。みんな厳しいよね、まったく。
あと、最近では妙な噂が出回ってる。あれだ。1周年まで後少しの宍戸カップルが不仲、ってこと。それが妙にリアルで聞くにも聞きづらいんだよね。あのカップルは長続きしてほしいのになー。そしてそして、ダンスのペアはまだ決まってなかったりする。近々決めるとかダンスリーダーが言ってたけどそれよりもあたしは女子パートを覚えなきゃ話になんない。










みんなベトーってなってる。この前まで涼しかったのに一気に暑くなったもんなー。しかもクーラー故障!廊下の方が涼しい状況になってます。かくいうあたしも「いいか、この問題はAの公式を使って…」とぐたぐた話す先生の話を聞く気にはなれず机に寝そべってべトーっとしていた。


「って、おめーら話聞いてんのかまともに聞いてんのしかいねーじゃんか先生泣くぞ」
「先生どんまいです」
・・・ありがとう。もういいです。今日はここまで。少し早いけど終わり。」
「やったー!終わりだー!」
「目覚めたー!次飯だよな!?隣りのクラスに避難!」
「アイウォントゥークーラー!!」
「ちょっ、何いきなり元気になってんのおめーら。だいきらい!」


数学担当のかおるちゃん(男だ。元ヤンらしいが天然ボケなところがあるのでなんだか微笑ましい)はうわあああ、と叫びながら教室を出て行く。それを見てみんなは更にはしゃぎだす。そして一部の男子達…多分購買組は、今か今かとドアの前で鐘が鳴るのを待っている。そこには超庶民派の宍戸くんもいらっしゃった。


「宍戸!あたしのパンも買ってきてー!」
「嫌」
「そんな間一髪で答えなくても良いじゃん。プラス10円でどうだ!」
「100円」
「・・・10円」
「100円」
「10円」
「10円」
「100円・・・あっしまった!」
「おーし任せとけ!俺が責任を持って買っといてやるからな!」


ちょ、おま、それ詐欺!!あたしの言葉は虚しくもキーンコーンカーンコーン、と授業の終わりを告げるベルに掻き消される。その瞬間走り出す購買組。ちくしょー宍戸め。あんな時だけ爽やかな笑顔しやがって――、って問題はそこじゃない。まあいい、50円は出してやろう!あたしって心が広いなーやっさしい。


「・・・ー」
「うわっ!?そんな亡霊みたいな声出さないでよ由梨ちゃん!」
、宍戸と仲良いんだね」
「え、なに。ヤキモチ?大丈夫だって由梨ちゃん!あたしにとってあいつはうんこだし、あいつにとってもあたしはうんこだから」
「うんこのが良いよ。あたしもうんこが良い。いっその事うんこが良かった!」
「え、ちょ、由梨ちゃん!?思いつめないで!」
「あたしうんこになる!」
「駄目だってそんな可愛い口から卑劣な言葉!ちょ、ちゃあん!!へるぷ、ヘルプミー!」


此処に男子が居ないのが幸いだ。由梨ちゃんのイメージズタボロになってしまうところだった。一方助けを求めたちゃんは「あたし景吾のとこ行くんで」と一言言い放つとピンク色のオーラを放出しながら教室を出て行ってしまった。薄情者!裏切り者!お前の母ちゃんでーべそ!


「どうしたんだよ由梨ちゃーん何があったんだい?言ってみそ?」
「あたし、・・・宍戸と別れるかもしんない」


脳みそぐるぐる心臓どっきんこ。あたしに何を望んでる?