『――好きなヤツ・・・居るのかよ』


宍戸の言葉が頭の中でループする。あたしがあの後返答した所、宍戸は「ふぅん・・・」と声を漏らしそのままそっぽを向いてしまった。なんなの、それ。期待しちゃうじゃんか。も、もしかして由梨ちゃんとの仲はまだ悪いのかとか・・・あたし、を、もしかしてだけど好きなんじゃないのか・・・とか、ってそれはないよね!ないないないない!あたし、なに考えてるんだ。駄目だ。やめよう、これ


「おい


なんだかそわそわした宍戸があたしを呼び出したのは2日後の昼食のこと。「な、に」と明らかに不自然な言葉を紡ぎながらもあたしは扉に寄りかかる宍戸の元へ。


「飯食い終わったら、屋上に来て」
「え、」
「ぜ、絶対だからな!」
「あ、うん、」


宍戸は顔を赤くさせると大急ぎで廊下へと逃げて行った。・・・まさか、うそ、だ。でも今の流れは・・・どうみても青春の1ページ『告白の呼び出し』にしか聞こえなかった。あたしが自惚れているだけなのかもしれないけど・・・本当に、うそ、嬉しい。ってあたし!嬉しいってなんだ。
でももし本当に告白されたら、あたしはなんて答えるのだろう。『うん、あたしも好きだった』?それとも約束を守って『ごめん』?どちらにしろ、あたし達は元の関係に戻れない。そしてもしあたしの気持ちを伝えた時、その時は・・・由梨ちゃんを失う。(本当、どうしたら。)


ー!今日のご飯なに!?」
「っ、」
?」
「由梨、ちゃん」
「おう?」
「ごめん。本当ごめん。」
「は?」
「・・・卵焼きいただき!」
「あっこら!」


どうしよう。

















可笑しい。明らかに可笑しい。
震える手、乱れる呼吸を何とか落着かせながらもあたしは屋上への扉を開いた。――そこに居たの、は。


「あっ、先輩!」
「・・・え?」


宍戸の部活の後輩、鳳くん。
いやいや、あたし場所を間違えたんだろうか。っていうか宍戸の姿が何処にも見当たらない。鳳くんの真剣な瞳に背中がぞくりとする。 ま さ か 。


「あ、あの、先輩は宍戸先輩と仲良かったから・・・その、呼び出してもらったんです」
「え、あ、そうなんだ」
「そ、それで・・・その、俺、」
「(う、うそ!)」

「俺、先輩がずっと好きでした。」


ちょっと待て待て。ということは、だ。あの時宍戸があたしに好きな人を聞き出したのは、鳳くんの為!?っていうことは鳳くんの言う通りさっきの呼び出しも頼まれて・・・う、わ。どうしよう。どうしよう。
鳳くんは黙りこくるあたしを見て、不安そうにこちらを見つめてくる。――え、まじで、か。うそ。まじで!?お、鳳くんの噂は何度か聞いた事がある。彼はその容姿、人の良い性格から良い噂が絶えない。そして宍戸と仲が良い。・・・もし、鳳くんと付き合ったら・・・宍戸カップル、と一緒に帰れたりするのだろうか。・・・や、帰るに違いないよね、・・・宍戸と、帰れる・・・?
そして気付けばあたしは、こんな言葉を鳳くんに呟いていた。


「――あたしも、好きだよ」


すると鳳くんの顔は途端に明るくなった。




















未だ整理が出来ない頭で教室に帰ると、半泣き状態の由梨ちゃんがあたしを迎えてくれた。・・・非常に嫌な予感。


「ど、どうしたの由梨ちゃん!?」
「っ、・・・」
「・・・何があった?」
「りょ、りょうにフられたぁ」


思考回路はショート寸前っていうのはこの事に違いない。
由梨ちゃんはあたしに抱きつきめそめそと泣き始める。佇むあたし。
――宍戸と、由梨ちゃんが別れた。ということは、一緒に帰る口実がない・・・。今更鳳くんの告白を断る訳にはいかない。ま、待って!あたし最低な女だ!鳳くんのこと好きでもないのに付き合って、そして今はちょっと喜びを感じてる。し、しかも自惚れてた自分がめちゃくちゃ恥ずかしい!いやだ。ほんと、どうしよう。な、泣きたい!




「あ、あたし、どうしよう・・・!」