どうしようどうしようとうろたえて居ると、窓の外から聞こえた声。
「千奈?フフ、早く来ないとシめるよ」
その台詞確か前も聞いたァァァアア!!
35.美味しい設定?
「ぎええ…たすけて…どうすればいいんだーいおかあさーん!」
もう何が何だかなあたしは階段をどたどたと走りながらリビングへと降りて行く。
そこには毎日見慣れた内容。1通の置手紙。
「今日から海外出張です☆いっぱい殺ってくるね♪ ママ」
おかあさーん!!!殺ってくるってなに!?
今更だがこの家は母子家庭らしい。リビングの棚の上にはちょこんとイケメンなお父さんらしき人物の写真がある。
前に「この写真、お父さん?」と聞いた事があるのだが、「やあね☆それはボスよ」と言われた。(ボスってなに?)
あたしは思う…お母さんは実はマフィアなのではないかと!
いやきっとそうだ。そうに違いない。
ガチャリ。
…ガチャリ?
ちょっと待て!ガチャリって何だ!待て待て待て!
折角様の美脳を元に推理していたのに、突拍子も無くガチャリ!?合い鍵!?ちょっと待てってこの展開!
「ー?入るよー?」
って、幸ちゃん!?っていうか言うの遅いよ!入ってから言うな!
あたしはリビングをどたどたと走り回る。隠れなきゃ!隠れなきゃ!徐々に近付いてくる足音がスリリング感を更に上げる。
「うわ、もういやだ――ぎゃ!!」
ずがん、と鈍い音が鳴る。机の柱に頭が激突した。
痛い!幼児化したからか分からないけどいつもより痛さが増してる。
ああ、そんな事より、隠れないと!!と思うものの、あたしの体は地面に座りこみ、打った頭を手で擦る。
――そんなあたしが上手く隠れられる訳も無く。
「?―――って、アレ?」
ふつーに幸ちゃんに発見されたのであった。
「――あれ?君、だぁれ?」
「…う、」
一瞬驚いた顔をするものの、すぐにふわりと笑う幸ちゃん。
ほれ見ろ!幼児化設定万歳!!
その微笑に少し安心してしまったあたしだが、そんな「です☆幼児化しました♪」なんて答えられる筈もなく、ただただ頭を擦る。
「ぶつかっちゃったの?」
「……」
「ふふ、大丈夫だよ。痛いの痛いの飛んでけー」
萌え死んで良いですか?
幸ちゃんが…あたしの頭を撫でて…「痛いの痛いの飛んでけー」…死ぬ!
だがそんな安らぎも長くは続かない。幸ちゃんは厳しい。そうだ、これは所詮ギャグ小説…!
「戻って来たー♪」
戻って来た。
「飛んでけー」と手を頭に翳して空高く上げたものの、その場から勢い良く頭を叩かれ激突した時の2倍くらいの痛みが襲ってきた。
「俺はね、幸村精市って言うんだ。君は?」
「……。」
「?………?」
ぎゃー!何名前言っちゃってるのあたし!!でもでも!頭撫でられながら首を傾げて聞かれれば誰でも言っちゃうでしょ!?
そして完全にパニクったあたした次にとんでもない発言をしてしまった。
「ちがう、じゃない!さかき、!」
「――榊?氷帝テニス部の…顧問の?」
「(うわああ、どうしよう!)う、…ん。さかき、……」
「―…っていう事は…榊先生の、子供?」
「(子供!?)うん、ぱぱ!ぱぱのこども!」
「あー…そうなんだ?じゃぁ、の家で預かってもらってるのかな?」と1人納得する幸ちゃん。助かったあー!!
それにしても榊先生の子供とか……………あれ、美味しい設定?
「ちゃんだっけ?」
「うん!」
「ふふ、俺の婚約者と同じ名前だ。多分漢字は””だろうね。俺の事、精市って呼んで良いからね」
「(こ、こんやくしゃ!?)うん、分かった。せーいち。」
「ふふ、そうそう。はおりこうさんだね。…それにしても、」
「?」
「その格好は―…女の子として駄目だよ、?」
「んう?」と声を漏らし自分の服を再確認すると、ぶかぶか乱れパジャマ。
幸ちゃんは「あはは、」と苦笑しながらあたしを両手で抱き上げる。
「取りあえず…着替えようね?洋服は何処にあるのかなぁ」
「きがえ?ようふく?」
「うん。まさかその格好で居る訳にもいかないだろうし……洋服、の部屋にありそうだなぁ…。(これは俺の願望だけど。)(の部屋に入りたいっていう)」
最後変な声聞こえたー!!
「っ、!?」と驚くあたしに対して、「ああ、俺の婚約者の方のね。」とさわやかに付けたす幸ちゃん。(だから婚約者って何だ)
っていうか、あたしの部屋!?え、いやすぎ!超汚いあたしの部屋!?幸ちゃんに!?嫌過ぎ!
「さてとー。の部屋は2階だよねー」と階段へ向かう幸ちゃん。あたしはそれを妨害するように幸ちゃんの腕の中で暴れる。
「やだー!やだー!」
「?どうしたの、?」
「ようふくなら、1っかいにある!きのうおかあ……、おねえちゃんが『あしたのようふくここおいとくね』っていってた!」
「が?」
「そう!おねえちゃんが!」と叫び、隙をついて幸ちゃんの腕から飛び出す。
そして心の中で(ルンルン風呂場に子供服置いてないと半殺し)(ルンルン風呂場に子供服置け)(ていうか置け)と祈りながら風呂場にダッシュ。
「やっぱ、よういがいいよね。るんるんさいこう!」
風呂場に来て見ると、あたしの手の届く高さに白のふわふわとした半袖のワンピースが置いてあった。
「もう、何処に行くのかと思ったよ。あ、これだね、洋服」
「うん!」
「じゃぁ、着替えようか?」
「え、」 思いもしない発言にあたしの顔は固まる。
そんなあたしに構いもせずに幸ちゃんは「はい、ボタン外すよー?」とあたしを促す。
ちょっと待て!
幸ちゃんに…あたしの裸体を見られる!?
それはマジで勘弁だ!無理無理無理無理無理すぎる!!
「いやだー!ひとりできがえられるもん!」
「はいはい、我がまま言わないのー」
「ぎゃー!へんたいえろすこのろりこんがー!」
「はいはい俺は変態エロスロリコンですよー」
、脱・処女します!(違うよね。激しく違うよね)
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