「はい出来ましたー」とにこやかに微笑む幸ちゃん。
それと対照的にむす、と膨れ面なあたし。
その顔を見てか、幸ちゃんはこんな一言を言った。
36.「ロリコンには嬉しい体だと思うよ」
・・・初めて幸ちゃんに色んな意味で殺意を覚えた瞬間だった。
「うーん、これからどうする?」
「ここにいたらあいかぎもったおさななじみみたいなへんしつしゃが来るからいや」
「あはは、そうだね。変質者が来るかもしれないもんね。じゃぁ…榊先生の所行く?」
「いく。」
即答☆
榊の所=氷帝学園!!!最高じゃねぇのォォォ!?!?!?!?
幸ちゃんは「じゃぁ行こっか?」とにこりと微笑み、あたしに右手を伸ばした。
「あの、しがない立海の生徒という者なんですけど…榊先生って何処にいらっしゃいます?」
「榊先生ですか?何の御用でしょうか」
氷帝学園に着き、警備員の人と話す幸ちゃん。
幸ちゃんが「榊先生のお子さんなんですけど…ちょっと、」と言うと、警備員の人は「では、そのお子様だけこちらへどうぞ」と言った。
(何かもう何が何だかあたしには分からん!)
「じゃぁ、また後でね?」
「また、あとで?」
「うん、放課後遊びに迎えに行くからね」
「え、こないで」
「ったく、ったら恥ずかしがりやさんだねええええ!?!?」
「ごめんなさいおむかえたのしみにしてます」
「ふふ、分かりました。じゃあね」
あたしの頭を撫で、警備員さんを睨み付けると幸ちゃんは手を振りながら去って行った。
…幸ちゃん遅刻決定だよね?良いの?良いの?幸ちゃんだから良いんです(グリーンだよ!)
あたしはそのまま警備員さんに手を引かれ待合室的なところへ行くと思ったら。
何故か見覚えのある教室、ピアノの音と歌声が聞こえて来る教室、明らかに授業中の音楽室へ連行された。
「え、ちょっと、まって!いまじゅぎょうちゅうだよ!?」
「ああ、拷問中の間違いですよ?」
にっこりと微笑む警備員さん。
反論は出来ない。だって榊先生の音楽の授業は「声を出すことが大切だ!音程はめちゃくちゃでも良いぞ!」と教師らしいことを言うと思えば、
音程が一番最初に外れた生徒をロックオンしてその授業中ずっと無茶振りをする最低な授業だ。
あたしと同じクラスの忍足もロックオンされた事があって、
「ブラジルの民謡音楽、ボサ・ノヴァを歌ってみろ、忍足。」
とかジャッカル連れてこねーと無理じゃんと突っ込みたくなるような要望ばっかされていた。
だから拷問中って事はあながち間違いではないのだけど、それを言うか!みたいな感じであたしが驚いていると、
「あ、拷問っていう意味はですね…」とイヤにイキイキした顔でグロテスクな話を始めてしまったので
あたしは慌てて「は、はやくぱぱにあいたい!」と何とも自虐的行為を取ってしまった。
すると警備員さんは「ああ、そうでした。申し訳ありません」と言って音楽室の扉を開けた。
「榊様、申し訳ありません。お子様が来ています」
注がれる視線。ざわめき出す教室。1人で立ち、明らかにターゲットにされていたであろう宍戸。(宍戸のクラスだったんですね)
榊先生は「…何ですと?」と顔を歪める。ヤバイ。でも此処は、自分で言うのも何だがこのプリティーフェイスをフル活用する時だ!
あたしはよちよちと榊先生の元へ走って行く。
「ぱぱ、ぱぱ。、ひとりじゃさびしいよ。ひとりにしないでよう」
榊先生の服の裾を掴みながら、上目遣いでそう言う。
教室が、一気に静かになる。榊先生の目が見開かれる。ヤバイ、失敗したか…!!!
榊先生はゆっくりと口を開いた。
「私の……娘……」
「………」
「私の…娘……」
「…ぱぱ」
「ちょー可愛いいいいい!!!!!!」
むぎゅうううう、と抱き閉められるあたし。ちょ、香水臭っっ!!!
そして榊先生はあたしにチュ、チュ、とキスを沢山する。キモい。
どうやら成功したみたいだ!よく分からないが!あたしは「ぱぱ、はなして」と頭突きした。
「名前は、何て言うんだ?私の娘よ」
「ってゆーの!お父さん」
「ああ、そうか。と言うんだな。何だ?パパが寂しくなっちゃったのか?」
「うん。、ぱぱだーいすき!」
「…!!!」とまた抱き着いて来る榊先生、もといパパ。
よし!この調子だ!
そしてこの後は宍戸と接触して、あ…なんだあの飛び跳ねてる奴。邪魔だな糞が…がっくんじゃん!!!
どうやら、このクラスは宍戸とがっくんが居る模様です!!!素敵!
そして、キーンコーンカーンコーンと何ともタイミングの良い鐘の音。勝手に立ち上がり、帰っていく生徒。宍戸、がっくん!カモォォォン!!
「あー、マジ疲れたな!」
「俺、今日最悪だったぜ…」
「ターゲットにされてたもんな!『宍戸、お前1人で小太鼓とリコーダーとシンバルやってみろ』とか言われてたよな!」
「ああ。シンバルを足でやんなきゃいけなかったからな。」
「お前すげー良い顔してたぜ!」
やったのかよ。
って、突っ込んでる場合じゃなくて!何故音楽室の出口へ向かう!?宍戸、がっくん!!!
そしてあたしを抱きしめたまま「今日はぱぱとずーっと一緒に居ような!」と語尾にハートマークを付けて言う榊先生。冗談よしてよ。
何が哀しくてこんなおっさんと一緒に居なきゃいけないんだよ(笑)
あたしは大きく息を吸い込むと、あいつに向かって叫んだ。
「ししど、りょうー!!!!!」
あれ、あたし何叫んでんの?って思ったのと、宍戸が驚いて教科書をバサバサーっと落とし、こちらに振り返ったのは同時だった。
N E X T
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