こうなったら後はどうにでもなれば良いんです
37.宍戸くんと私
「え、あ、…、な、何だよ…」
明らかに動揺してる宍戸。あたしも自分でこんな行動とると思わなかったよ。予想GUYだよ。
もう、これは…どうにでもなれこんちくしょー!!
あたしは榊先生の腕から無理矢理抜け出し、短い足でよちよちと宍戸の元へかけて行く。
「、ししどといる。ししどといたい」
「俺…?」
「おー、宍戸懐かれてんじゃん!お前って子供によく好かれるのなー」
「っていうか…お前、どうして俺の名前知ってるんだ?」
「は、お姉ちゃんが!おはなしてくれたの!『私の恋人よv』って言って!写真見せてくれたの!」
「あ、アイツ…こんな小さい奴に、何教えてんだよ……」
うむ、我ながら良くつけた嘘だ。完璧だ。
宍戸は耳を赤くし、「はぁ、」と目を手で覆った。
「…!!パパと宍戸、どっちを取るんだいっ!」
「ぱぱ、、ししどといっしょにいたいの!いっしょにいさせてくれないと、ぱぱのこときらいになっちゃうから!」
この一言に榊先生は衝撃を受けたらしく、「オーアルゼット……」と呟きしくしくと泣き始める。え、キモッ!!
「か、監督…、この子、どうすれば…?」
「あっ、あげないんだからね!!は私の物なんだからねっ!」
「え、あ、すみません」
「ちゃんと、大切にしなさいよね!!!泣かせたら承知しないんだからぁッッ!!」
「は、はい!娘さんは僕が幸せにします!」
そういって監督は、薔薇色のハンカチを甘噛みしながら涙を流し走り去って入った...
え?つまりは、宍戸と一緒に居て良いってこと?マジで?マジで?
展開に着いていけないのか、呆然とするがっくんと宍戸。
「おい宍戸…この子、どうすんだよ」
「え…お前、はどうしたいんだ?」
「ししどとがっくんと、いっしょにいるの。」
「うーん…とりあえず教室に連れてってみるか?」
「そうだな。監督の子供らしいし、放課後まで預かっとけば良いんじゃねえ?」
「どんまいふたりとも。まあ、なんとかなるんじゃないの」
「「お前が言うな」」
「ほら、行くぞ」と手を伸ばしてくる宍戸とがっくん。
うおう、両手に花。
こ、これはあたし…さりげなく凄い事を体験しようとしてる!!すげー、あたしすげー!
そして、右手にがっくん、左手に宍戸というなんとも美味しい形であたし達は歩き出した。
「お前、名前何て言うんだ?教えてみそ?」
「あのね、っていうの」
「?すげー偶然だな。そういえばアイツ…今日学校来てねぇよな。朝練あるって言ったのによ」
「侑士と跡部とジローと鳳が怒りに狂ってたよな」
「あれは何か企んでる顔だったな」
あの、私すっごく元の姿に戻りたくない。
何されるか分からない!!今度こそ脱・処女みたいな?(そこ、ミミズを見る様な目で見るな!!)
その後しばらく雑談をしながら歩いていたら、急に思い出したように宍戸が「あ、」と声を出した。
「お前さー、俺の名前分かる?」
「ししど、りょう!」
「うんうん、それで合ってるんだけどよー『亮』って呼べよ」
「あ、じゃあ俺のことも『岳人』って呼んでみそ?」
「りょう、にいちゃん…がくとにいちゃ…?」
本当は同級生のあたしがこいつらを「お兄ちゃん」呼ばわりすることが何だか不思議だったので、
その言葉を確認するように口の中で転がす。
一方宍戸とがっくんと言えば、顔を真っ赤にしてそれを隠すように手で顔を覆っていたのだが、そんなことはあたしは知らない。
――ので、やっぱり呼び捨てで呼ぶことにした。おし!
「何か俺…兄妹出来た感じってこんな感じなんだろーなー…って思った…」
「俺も、姉ちゃんと生意気な弟しかいねぇから…こういうのって、良いな!」
「って可愛いなー。すっげー持って帰りたいくらい」
「りょう、もってかえってもいいよ!」
「おう、じゃあ今日はお持ち帰りだな!」
ニカッ、と笑う宍戸もとい亮。
あの、私が貴方をお持ち帰りして良いですか?
気がつけば教室に到着!女の子達の好奇心の目があたしに向いています!
良いだろう!!両手に花だぜ!!うらやましいだろ!!!
あたしは思わず鼻で「フッ」と笑った。(←最低)
「亮ぉ〜!岳人ぉ!何その可愛い子!」
「やばー!超可愛いじゃん!」
「あ、コイツかー?」
ひょい、と宍戸に持ち上げられる感覚。……やばい、悶える!!!
すると宍戸は何を思ったのか自分の頬をあたしの頬に擦り付け、幸せそうにニコニコと笑った。
「きゃー!可愛いー!」
「宍戸、お前良い父さんになりそうだぜ…」
「えー、じゃあ亮、あたしと結婚しよ!」
ふざけんな糞アマ
誰がそんなケバい厚化粧女と結婚するか!第一中学生なのに学校に化粧してくんなこのチンカス!
むかついたあたしは短い手で宍戸の首元にぎゅ、と抱き着き不貞腐れた様に「りょうのおよめさんになるのはだもん」と呟いた。
「おい宍戸!プロポーズされてんじゃん!」
「――だそうだから。俺はと結婚するんだってさ」
「え〜…超残念ー」
「じゃあ浮気しよっ」
「あー、無理だな。俺、妻一筋だし」
宍戸さんのその幸せそうな笑顔が素敵です。幼児化万歳!
N E X T
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宍戸さんは妹的存在が出来てとても嬉しい様子。