「ご、ごめんちょた!」
にこにこと爽やかな笑顔を振りまく長太郎をあたしは思いきり飛ばす。
幼児の力と言えど長太郎は油断しきっていたようで、思い切り後ろに飛ばされた。
・・・もしかして、ドロケイサバイバル再来ですか?
42.気分は逃げ出すお姫様
いきなり飛ばしてしまった長太郎がすぐにおいかけてくると思いきや、当の本人は
「や、やるなウルトラマン!」
まだウルトラマンごっこの続きだと思っているらしいです。
しかし私には好都合。絶好のチャンスに過ぎない!
何処へ向かって良いのかは分からないけれど、とりあえず奴等から離れる為に走り出す。
「え、ちゃん!?何処行くの!?」
後ろの方から長太郎の困惑の色を含んだ声。
やばい!他の奴等も絶対気付いたに違いない!
っていうか捕まる!捕まるよ私!
全国区プレーヤーvs5歳ですよ!?
奴等が相当のアホじゃない限り完全に追いつかれます。
「ん?追いかけっこか?」
「ちゃんはおちゃめさんやなぁ」
「ふふ、待てえ☆」
・・・奴等は相当のアホでした。
うふふ、あははとわざとらしい笑い声を出しながら奴等はとても遅く(寧ろ歩く速さで)私を追いかける。・・・全員で。
寧ろ試合見るの放棄してますからね。
っていうか、そろそろ3分経ちそうですが!やばいですが!
私は、よりいっそう走るスピードを高め、奴等と差をつけると目の前にあった倉庫を右に曲がる。
するとそこにあったのは倉庫への扉。幸い扉の鍵はかかっていない。私は迷わず倉庫へと走り込んだ。
そして扉を閉め薄暗い倉庫の中を確認した途端、自分の体に異変が起きたのを感じた。
「うっわ、まじ危ね!セーフ!頑張った私!ウルトラマンはバルタン星人に勝ちました・・・っ!!」
「っ!!?」
「っ!」
どきり。嫌な汗が背中を伝う。
口から心臓が飛び出しそう、っていうのはきっとこのことなんだ。
頭の中が真っ白だけれど、恐る恐る後ろを振り返る。
「りょ、涼・・・?(そういえばこいつ立海だった!)」
「おう!久しぶり!なんでこんな所に――って、うわ!」
「は?」
お前、なんて格好してんだよ!
涼はあたしの顔を見るなり慌てて後ろを向き声を荒げる。
何か私おかしいのか、と思いつつも自分の体に目を向ける、と。
「っぎゃー!!」
びりびりに裂けた白いワンピース。
きっと、15歳の体に戻った途端大きさに耐えられなくなって服が裂けたんだ・・・!なにこのセクシーな状態!
「っちょ、涼、どうしよう!!」
「俺に聞くなよ!な、なんか着ろ!はやく!」
「え、着るもんないよ!!」
「は!?お前何考えてるんだよ!っ、ちょっと待ってろ!」
すると涼は自分のYシャツを脱ぎ始める。
涼は後ろを向いていてよく表情は分からないけれども、薄暗い倉庫でも分かるくらいに耳は真っ赤に染まっていた。
「涼に強姦されるー!!!」
「アホか!!!ほら、これ!」
ずい、と差し出された手には、涼のYシャツ。
もしかしてこれを着てろ、ということなのだろうか。
「え、涼寒くない?」
「もうなんでも良いからとりあえず服着ろ」
畜生、つれない奴め。
一応ありがとう、と礼を言いながらも私はそのYシャツを受け取る。
小さいワンピースをなんとか脱ぎ捨て、そのYシャツを着てみる。
Yシャツは思ったより大きくて、私の太ももまで到達していた。
「涼、なんかごめん」
「・・・おう。なんか分かんねーけど理由は聞かねえ方が良い?」
「うん。ややこしいから。」
「ん。」
「っていうかもう着替えたよ。」
涼が何時までも後ろを向いているのでそう促すと、涼は「お、う」と緊張気味の声を出しゆっくりと私の方を見た。
「・・・っ!ジャ、ジャージ取って来る!!」
私を見た途端再び顔を真っ赤にさせた涼は、慌てたようにいきなり立ち上がる。
・・・なんか涼って良いパシリになりそうだよね・・・
「・・・涼」
「な、なんだよ」
「なんかごめん。ありがとう」
「・・・おう。」
「・・・涼」
「・・・なんだよ」
「ズボンも貸してくれると嬉しい。」
「お前は俺をパンツ一丁で歩かせる気か。」
涼が再び歩き出そうとした時、不気味な声が外から聞こえてきた。
「ちゃーん!?何処に行ったのー!?」
「この倉庫の中に居るんじゃねぇか?」
「そうっすね!開けてみましょっか!」
「っちょ、涼、どうしよう!!」
「俺に聞くなよ!う、わ、どうしよう!どうしよう!」
「っぎゃー!こっち来るなー!」
「いや隠れないと!――うわ!」
「っぎゃ!」
がちゃり
「・・・なにやってるの?」
涼に押し倒された格好。しかも服装はYシャツ一枚。涼は上半身裸。
最悪のタイミングで見つかりました。
N E X T
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