亜久津の呟いた言葉は、私を驚かせるのには十分すぎるモノだった。
「俺とテメーは幼馴染だろーがよ!あと、千石も!」
46.幼馴染
涼と亜久津と、あと千石が幼馴染って…!涼ってさりげなく凄い人だ…!
幼馴染って言うことは涼の家も知ってる筈。うほ、私って運が良い!!
「なぁ、亜久津」
「あ?」
「俺の家、何処?」
「はあ?コイツだろーがよ」
亜久津の指差した先は『柳瀬』と名前札が下げてある一軒家。
・・・。
「…。」
「…。」
「…。」
「…ですよねー!」
涼のカバンを探り、鍵らしきものを取り出す。
玄関の鍵穴に刺して回すとがちゃり、なんてリズムの良い音が。
何事もなかったかの様に家に入ろうと足を踏み入れるが、後ろにいた人物を忘れていたことに気がづいた。
「でさ、」
「何だよ」
「何で亜久津は涼――、俺の家の前に居た訳?」
「…」
しばらくの沈黙。
ああ、もしかして。学校の違う幼馴染に会おうと思ったから?
そう考えると思わず口元が綻んだ。私は今『にやり』とした笑みをしているに違いない。
「てめーには関係ねーよ!バァァァアアアカ!!」
亜久津はそう言い捨てて走って行ってしまった。
何あのアホの子…!めっちゃ可愛い!
会いたかったんだ!涼に会いたかったんだ!久しぶりに会いたかったんだ!
…可愛いなあ!
亜久津って子犬みたいだなあ。なんて新たな発見をしながら涼の家へあがらせてもらった。
* * *
涼の家は本当普通の家で大して私の家と変わらなかった。
涼の部屋だって持ち主の性格が出ていてちゃんと片付いていたし。
暫く家を探検した後に電話の受話器を取る。かける先は、自分の家。
どうせ今日も母親が居ないのだから、出るのは涼だろうなあ。
その予想は当たって数回呼び鈴が鳴った後出てきたのは紛れもない私の声だった。
『もしもし、か!?』
「うん、だ!なんとか家まで帰れたんだ?」
『おう。忍足に送ってもらってさ、まあお礼に家あがってもらったんだけど…その時忍足のカバンから何出てきたと思う?』
「ってか人んちに勝手にあげるなよー!忍足だぞ!?…で、結局何出てきたの?」
『パジャマと歯ブラシ』
・・・うん☆
まあ、忍足だもんね☆慣れたよ、私?
涼の話によれば、そのまま忍足には無理矢理帰ってもらったらしい。流石の涼も引いたと。
『あぁ…あとよ、これ…夢じゃないんだろ…?』
「え、何で!?」
『さっき変な自称妖精が来て…「信じないとピーーーしちゃうよ?」とか言って…』
「…どんまい?」
『ああ、おう…』
それからルンルンが来るまでの辛抱だから、と2人で励まし合いました。
あとそれまでの生活も。
涼の家もめったに母親は帰って来ない(父親は行方不明)らしいので家族とかは大丈夫。
問題は風呂や着替えで、そこは目を瞑って頑張る、ということに。
通学とかは誰かと一緒に行ってなんとか頑張ろうと。ちなみに涼はテニス部らしいが殆どサボってるらしい。
「あ、最後に涼!」
『あ?』
「涼の部屋に『甘美な肉体・男の花園』っていう雑誌があったんだけど…」
『…捨てといてくれ。(このまえ千石が置いてったやつか!)』
「ううん。私は大丈夫、誰にも言わないよ!」
『変な勘違いはやめろよ!それを言うならお前の部屋にもろりぃた☆こんぷれっくすっていう雑誌があったからな!』
・・・忍足イイイイイイイ!!!!
N E X T
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