「ふー、やっと終わった!さー早く帰ろーっと!」


「涼、この後部室に集合じゃから」


「俺、帰るから」








49.「いや、帰さないから。」








「イーヤー!助けてー!キャー!」


「今日こそは捕まえた。いつもお前さんHR終わった途端逃げ出すから・・毎回、同じクラスの俺が怒られる」


「恭ー!助けてー!」








起立、気をつけ!礼!「さようなら〜」の件が終わった瞬間私の肩をがっしり掴むもの、それは仁王雅治独身15歳・・


電話で涼は『いつもサボってる』って言っていたからもうこれで学校終わりだと思ったのに!不覚!


恭くんはにっこり手を振って(あ、今日初めて見た無感情じゃない顔!)俺にさようならを告げる・・酷っ!








「俺今日用事あるからー!無理!!」


「頼むから暴れなさんな。お前を連れてこないととばっちり受けるのは俺なんじゃって・・」


「う・・」








何だか仁王が可哀想に思えた私を許してください。


仕方なく抵抗するのを止めると、仁王は嬉しそうに目を細めた。








「ありがと」








かっ、可愛い・・!








* * *







「おー仁王に涼!やっと来たか!遅いっての!」


「うむ、では始めるとしよう」


「副ブチョ堅苦しいっス!」








仁王に連れて行かれた先はテニス部の部室。


レギュラー陣が揃っていて、丸くなって座っている。



その円の中心には散らばるトランプが。








「あのー・・部活じゃないの?」


「? 何を言っているんですか?今日は部活はありませんよ」


「ああ。だから毎週恒例のトランプ大会だろ」








ト、トランプ大会・・!なんとも青春な響き!


仁王と一緒に空けられていた2人分のスペースに座り込む。


隣はジャッカル。目の前は・・ 警戒心バリバリでこっちを見つめている幸村さん。


いや、もう、まじ。


なんか、真顔、で、わ、た  し  を  み  つ  め  て  る  。



何この笑顔・・!なんか魂吸い取られる・・!







「で、なにやるんスか?」


「あー、俺大富豪やりてぇ!」


「良いですね」


「ちなみに負けた奴は勿論罰ゲームだろぃ!」








罰ゲーム!?うわー、絶対負けられない!




* * *




全敗しました。


だって!大富豪ってさりげなく頭使うじゃないっすか!・・そりゃあ、負けるっての!







「ふむ、罰ゲームは柳瀬だな。」


「何にするんじゃ」


「あっ、グラウンドに出て好きな奴の名前叫ぶのは!?」


「はぁ!?ちょっ、待てまて!!俺いやだよ!第一そんな人いないし!」


「え?なに、涼そんなに嫌なのかい?」


うん、すっげー嫌!


「「「よし、じゃあそれにしよう。」」」


お前らアァアアアアァア!!







明らかに私が嫌がってるの見て決めたよね!いや、そりゃあ嫌な事をするのが罰ゲームっていうもんなんだろうけど。


そうと決まれば、と私を引きずって行くテニス部の皆さん。


その光景に女の子達は黄色い悲鳴をあげながらも何事かと着いて来る。着いて来ないで。頼むから。


何とか抵抗してみるけど2人がかりで引き摺られてみれば必死の抵抗も虚しく終わりました。


そしてグラウンドに着いてしまった・・!







「おー、結構ギャラリー集まったな」


集まらなくて良いのに!


「何言ってんの涼。多い方が楽しいじゃん!(ニカ!)


「(そんな爽やかに笑われてもォ!!!)」







だって、いや、本当!もう逃げられない雰囲気!?


これ涼の体だし、下手なこと言ったら今後の涼の生活に支障が・・!


そう考えている内にも「こっくーれ!こっくーれ!」のコールが始まる。最悪だ。こういうところで中学生らしさを見せ付けなくても良いのに!







「うっ・・!」







こうなったら、だ。よし、私頑張ろう。


ありえないような人の名前叫んで逃げよう。うん、だってしょうがないもんね。


片手で告れコールを制し、静まり返った所で息を吸い込む。女の子たちの視線を感じる。







「俺が好きなのは・・







フランソワだあああああああああ!!」







グラウンドの空気が、固まった。広い空気が、固まった。


みんなポカンと私を見つめる。うん、フランソワって誰だろうね。


よし、逃げるか!と私が一歩踏み出すのと、1人の女の子が大声で泣き始めたのは同時だった。







「りょ゛、りょう゛ぐ〜ん!!!」







あ、今朝のおかまさんだ!私に手を振ってたおかまさんだ!


何で泣くんだろう。明らかにジョークなのに。でも私は逃げ「あ゛たしも!あだじも涼ぐんがだいずきよおおお゛!!」


・・えええええええええええ!!?


まさか!まっさっか!







あたし、田中フランソワ太郎は涼ぐんと付き合いまずー!!!







・・えええええええええええ!!?







* * *







という訳で、涼。本当にごめんなさい。


『お前ええ!何してんだよおおおお!(俺が好きなのはお前なのに!)』


「だって普通さ!フランソワなんて人が居るとは思わないじゃん!」


『居るんだようちの学校には!馬鹿!アホ!


って名詞は悪口じゃないから!馬鹿やアホと並べて使わないで!
 それに・・さ、私だって本当に悪いと思ってるんだよ?本当に。」


『まあ・・俺もと同じような事しちゃったし・・あ。


え、なに、今の。同じことしたって何。


『だってさあ!一日に色んな人から告白されるとは思わなかったんだもんよ!それに俺だって付き合わせたくなんか・・寧ろ俺が告りたい


「いやいや、待って?詳しく説明して?」


という訳で、。本当にごめんなさい。


涼ううううう!?







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「ふふ、よければクリックよろしく。涼があの子を好きだったなんて意外だったな。俺と一緒の子が好きなのかと思った。」